[WCB-3] Molecular analysis of novel survival strategy of Streptococcus pneumoniae by autophagy hijacking
常在菌である肺炎球菌はヒトの鼻咽頭上皮細胞層に侵入し,菌血症,髄膜炎といった致命率の高い侵襲性感染を引き起こすことが知られているが,宿主細胞内での生態は不明な点が多い。現在までに我々は,肺炎球菌を感染させた宿主細胞内では,典型的と非典型的という二層からなる選択的オートファジーが誘導され,肺炎球菌が積極的に排除されること見出し報告している。一方で肺炎球菌が赤痢菌やリステリアのようにオートファジーを抑制する可能性については不明な点が多く残されていた。そこで,今回,我々は肺炎球菌の病原因子が宿主細胞のオートファジーを制御する可能性について検討した。その結果,肺炎球菌の菌体表層に存在する病原因子CbpCがオートファジーを強く誘導することを見出した。そこでCbpCと相互作用する宿主オートファジー関連因子を網羅的に探索した結果,菌から放出されたCbpCが宿主細胞内でAtg14-CbpC-p62複合体を形成することを見出した。さらに,この複合体形成により誘導された選択的オートファジーは,速やかにAtg14を分解へ導き,細胞内のAtg14を枯渇させることが明らかになった。Atg14はオートファジー誘導とオートファゴソームとリソソームの結合に必須であり,実際にCbpCによるAtg14量の低下は肺炎球菌の細胞内生存を増強させた。以上の結果から,細胞内に侵入した肺炎球菌はCbpCという「撒き餌」をまいて選択的オートファジーを強く誘導しAtg14を巻き込みながら分解するという新たなオートファジーハイジャック機構の存在が明らかになり,病原細菌の多様で巧みな生存戦略の一端が明らかになった。