第94回日本細菌学会総会

講演情報

細菌学若手コロッセウム

[WCB] 若手研究者による最先端研究:細菌学の明日を切り拓く若人たちの発想と挑戦、今此処に!

2021年3月23日(火) 16:00 〜 21:00 チャンネル2

コンビーナー:山口 雅也(大阪大学),山崎 聖司(大阪大学),高野 智弘(国立感染症研究所),一色 理乃(早稲田大学)

共催:細菌学若手コロッセウム 準備委員会

[WCB-5] 緑膿菌の薬剤耐性獲得阻止を目指した,薬剤排出ポンプMexBの多角的解析

○古閑 修輝 (大阪大院・薬・細胞生物)

【背景】近年,細菌の多剤耐性化が深刻化している。細菌の薬剤耐性化機構の一つに細菌薬剤排出ポンプがあり,医療現場で度々問題となる緑膿菌ではMexBやMexYといった排出ポンプが多剤耐性化に寄与している。緑膿菌のポンプを阻害剤する物質としては,MexBのみを阻害するピリドピリミジン誘導体ABI-PPなどが見つかっている。以前の研究で,薬剤排出ポンプには阻害剤が結合する阻害剤結合ピットが存在することが確認されており,このピットにおいて特定のアミノ酸に変異が起きると,MexYの阻害剤感受性が変化することも判明した。しかしながら,MexBのピットと阻害剤ABI-PPの結合にとって重要なアミノ酸は不明であった。本研究では,MexBの変異によって,阻害剤感受性がどう変化するのかを明らかにすることを目指した。
【方法】X線結晶構造解析等により,阻害剤がどのようにMexBと結合しているのかを構造面から解析した。また,結合にとって重要と思われるピットの領域に,アミノ酸を嵩高くする変異を加えたMexB発現株を多数構築し,適切な濃度の抗菌薬・阻害剤中で培養することで,各細菌の増殖曲線を測定した。
【結果】阻害剤ピットのアミノ酸Ile277,Val612,Ala279,Val139をトリプトファンに変化させると,ほぼ完全にABI-PP の効果を排除できることが明らかになった。
【考察】以上の結果から,阻害剤の結合においては特定のアミノ酸だけが重要なのではなく,阻害剤結合ピット全体の構造および空間が大事であると考えられる。将来的に臨床用の阻害剤が開発されて長期的に使用される場合,我々は上記のような変異が起きないかを注視していく必要がある。