[YRS4-4] 肺炎球菌の感染と伝播における宿主免疫と微生物の相互作用
病原微生物は宿主表面あるいは体内へ侵入(Entry)し,特定部位への定着を経て感染症を発症(Establishment)する。続いて宿主の体外へ排出(Exit)された微生物は新たな宿主へと侵入する。この一連のライフサイクルのそれぞれの過程における宿主免疫機構と病原微生物との相互作用を解明することは,新たな治療法や予防法の開発において極めて重要であると考えられ,動物モデルの構築が重要となる。肺炎球菌は集団保育や兄弟間の濃厚接触により,宿主の鼻咽腔へ侵入し無症候性に定着する。鼻咽腔において保菌が成立すると,肺炎球菌は宿主の免疫状態(低免疫能,ウイルス性上気道炎等)に応じてしばしば周辺臓器へ移行し上気道感染症を発症する。さらに肺炎球菌は深部組織へ侵入し,敗血症や髄膜炎などの侵襲性感染症を引き起こすことも知られている。当教室では肺炎球菌の主な宿主である小児の感染症発症および宿主間伝播の機序を明らかにするため,仔マウスを用いた動物モデルを確立した。本講演では,1)肺炎球菌の鼻腔保菌の成立から感染症発症の機序2)宿主間伝播を促進する宿主因子,病原因子,環境因子の同定3)免疫賦活化による鼻腔保菌,感染症および宿主間伝播に対する予防効果について,これまでの動物実験によって得られた知見を紹介し,肺炎球菌感染症・宿主間伝播における新たな治療法・予防法の可能性について考察する。