第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP3] 1. 分類・疫学・感染症-c. 臨床微生物の分離・性状

[ODP-015] 市販カキのEscherichia albertii汚染実態調査

新井 沙倉1,山谷 聡子2,大塚 佳代子3,小西 典子4,尾畑 浩魅4,大岡 唯祐5,広瀬 昌平1,工藤 由起子1 (1国立衛研,2宮城保環セ,3埼玉衛研,4東京都健安研,5鹿児島大)


【背景】Escherichia albertiiは,2003年に新種として提唱された新興下痢症原因菌である.河川水からの分離報告があるため,水を介した食品汚染の可能性が危惧される.そこで本研究では,水産食品のカキにおける本菌汚染実態調査を実施した.
【方法】国産のマガキ385検体およびイワガキ42検体をmECまたはNmEC中にて42℃で培養した.DNAを抽出し,Nested PCR(大岡ら)を行った.PCR陽性の場合には,検体培養液を糖を添加したDHL寒天またはマッコンキー寒天で分離培養後,糖非分解コロニーについて,1st PCRにてE. albertiiの確認を行った.一部を除くPCR陽性カキ検体は,MPN法(3本法)も実施した.分離株の各種生化学性状および遺伝子解析を実施した.
【結果と考察】マガキ7検体(1.8%)およびイワガキ2検体(4.8%)の計9検体がPCR陽性となり,イワガキ1検体を除く8検体(1.9%)からE. albertiiが分離された.イワガキ1検体由来株は,白糖分解性であり,その他全分離株は乳糖,白糖およびキシロース非分解性であった.全分離株はstx1stx2およびstx2f陰性であり,マガキ1検体由来株を除く全分離株がeae陽性であった.また,PCR陽性検体の産地は,地理的に離れた4産地由来だったため,E. albertiiが日本に広く分布している可能性が示唆された.さらに,季節に関係なく汚染が確認されたことから,本菌が海水中に常在している可能性も示唆された.MPNを実施した全3検体は検出限界以下であったため,カキに含まれるE. albertii菌数は極めて少ないと推測された.しかし,多くの分離株は病原因子eae陽性であったことから,カキの取り扱いには,低温管理や加熱調理が必要であることが改めて示された.