第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP6] 2. 生態-a. 生態・共生・環境微生物

[ODP-026] Legionella pneumophila JR32による野外由来繊毛虫Anteglaucoma CS11Aの殺滅機構に関する検討

川代 愛梨1,大久保 寅彦1,中村 眞二2,タパ ジーワン3,山口 博之1 (1北大院・保科・病態解析,2順天堂大院・医・形態解析イメージング,3北大・人獣リサーチセンター)


【背景・目的】Legionella pneumophila (Lp)はレジオネラ肺炎の病原菌で,通常河川や冷却塔に生息する.同様の環境に原生動物の繊毛虫が生息しており,当研究室ではLpと3種の繊毛虫Anteglaucoma sp. CS11A(下水由来),Colpoda E6(シンク由来),Tetrahymena thermophila IB (実験室株)との共培養実験を行い,二者間の相互作用が異なることを報告した(第93回日本細菌学会総会,2020).本研究ではAnteglaucomaがLpに4型分泌装置依存的に殺滅されることを明らかにし,殺滅に関わる細菌側の因子を探索した.
【材料・方法】Lp JR32および4型分泌装置欠損株JR32 Δdot/icm (静岡県立大 三宅博士より分与)と,Anteglaucoma CS11A,Tetrahymena IBの2種の繊毛虫を各々MOI 10,000で混和し室温で共培養した.経時的に捕食されたLpを観察し,繊毛虫数を算定した.また,Lp JR32トランスポゾン (Tn) 挿入変異株ライブラリーを作成し,Anteglaucomaへの感受性が変化した株の選別と捕食されたLpの観察を行った.
【結果・考察】Lp JR32と共培養したAnteglaucomaは培養2日後に全て死滅したが,JR32 Δdot/icmとの共培養では死滅は見られずAnteglaucomaが4型分泌装置依存的にLpに殺滅されることが分かった.このような殺滅はTetrahymena IBでは見られずAnteglaucomaに特有の現象といえる.Tn挿入変異株ライブラリーのスクリーニングから4型分泌装置をコードする遺伝子の他,膜輸送に関わる遺伝子が殺滅に関わる候補として同定された.またAnteglaucomaに取り込まれたLpが食胞からエスケープし細胞質に散在する様子が観察され,このLpの動態がAnteglaucomaの殺滅に関与した可能性がある.
(非会員共同研究者: 玄行理子)