[ODP-025] Investigation of the mechanism of symbiotic bacteria-dependent bacterial transport by amoebae
本研究室では以前,土壌から環境クラミジア(Neochlamydia S13)が共生するS13アメーバ(Acanthamoeba)を分離した.S13アメーバから共生細菌を除菌するとアメーバの増殖が促進することから,S13アメーバは負担を負ってでも共生細菌を保持していると考えられる.S13アメーバが共生細菌からどのような恩恵を受けているかを検証する中で,私達はS13アメーバが餌となる細菌(大腸菌・サルモネラ等)を共生細菌依存的にその表面に付着させ,寒天培地上で運搬する現象を発見した.トランスポゾン挿入株を用いた検討から,運搬される細菌のNa+/H+逆輸送体NhaAが運搬現象に関与することが示唆された(第93回細菌学会総会).そこで本研究ではNhaAと運搬現象の関係性を検証した.E. coli DH5αから作出したnhaA遺伝子欠損株は,トランスポゾン挿入株と同様に運搬現象が減弱し,細菌が運搬されることなく消失した.nhaA遺伝子再導入株では運搬現象の復帰がみられた.NhaA特異的阻害薬(2-Aminoperimidine)存在下では濃度依存的に運搬が減弱し細菌が消失した.一方,nhaA欠損株や阻害薬曝露時の菌体をグラム染色で鏡検すると菌体の伸長がみられたことから,NhaAは菌体形状の維持に寄与すると考えられた.これを踏まえ,S13アメーバによる細菌運搬現象には菌体形状が重要だと仮説をたて,mitomycin C処理でE. coli DH5αを伸長させて運搬現象に供した結果,nhaA欠損株と同様に運搬現象の減弱がみられた.以上より,S13アメーバによる細菌運搬現象には細菌の形状(NhaAが維持)が重要であり,伸長した細菌はS13アメーバ表面に付着せずに貪食されて消失し,運搬現象を起こさないことが明らかになった.
(非会員協力者 田中菜那)