第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP22] 5. 病原性-b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-113] ボツリヌス菌C2毒素の初期細胞内侵入過程

松岡 ももこ,小林 敬子,竹原 正也,永浜 政博 (徳島文理大・薬・微生物)


ボツリヌス菌C2毒素は,C2IとC2IIからなる2成分毒素で,両者の共存下で生物活性を示す.C2IIの活性型C2IIaは,細胞膜に結合後,オリゴマーを形成し,これにC2Iが結合し細胞内へ侵入する.C2Iは細胞質のG-アクチンをADP-リボシル化し,細胞のラウンディングを示す.今回,C2毒素の細胞膜からの初期細胞内侵入機構を検討した.我々は,既にC2IIaの侵入には,リソソームのエキソサイトーシスで遊離した酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)が関与することを報告した.今回,リソソーム中のカテプシン(CTS)の役割を検討したところ,システインプロテアーゼ阻害剤は本毒素の細胞毒性を抑制した.次に,本毒素処理で遊離するCTSを検討すると,システインプロテアーゼのCTSBとCTSLの活性が上昇した.また,CTSBまたはCTSLをsiRNAでノックダウンした細胞に対する本毒素の作用は,CTSBのノックダウン細胞のみ細胞毒性が抑制された.即ち,C2毒素の侵入はリソソームから遊離したCTSBが関与することが判明された.次に,C2IIaの細胞膜結合に関与するドメイン4(D4)の役割を調べるため,C2毒素の細胞毒性に対する効果を検討すると,D4はC2毒素の細胞毒性と結合を抑制した.以上より,C2IIaはD4ドメインが結合し,オリゴマーを形成する.その結果,細胞外に遊離したASMaseやCTSBによりC2毒素のエンドサイトーシスが促進されると考えられる.