第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP22] 5. 病原性-b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-134] Helicobacter cinaediにおけるVI型分泌装置の機能解析

富田 純子,大塚 佑奈,久綱 僚,河村 好章 (愛知学院大・薬・微生物)


【背景】Helicobacter cinaediは微好気性環境で生育するグラム陰性ラセン菌であり,感染症状として発熱や下痢,蜂窩織炎,敗血症などが挙げられる.本菌種は複数の医療施設で院内感染を引き起こしており,再発率も高いことが問題となっている.本菌種は全ゲノム解析により,VI型分泌装置(T6SS)の遺伝子クラスターを含んでいることが明らかとなっているが,その機能は不明である.そこでH. cinaediにおけるT6SSの機能を解析するために,遺伝子欠損株を作成して比較解析を行った.
【方法】菌血症患者から分離されたH. cinaedi PAGU611株を用いて,T6SSの構成遺伝子であるicmFの欠損株を作成した.腸管上皮細胞株であるCaco-2細胞に対して,細胞への吸着性・侵入性を定量PCRおよびFISH法で評価した.またT6SSが炎症反応の誘導にどのような影響を及ぼすかを検討するために,各種サイトカインのmRNA発現量を定量PCRにて測定した.
【結果および考察】腸管上皮細胞様に分化したCaco-2細胞に対して,野生株およびicmF欠損株を感染させ,細胞への吸着性・侵入性を測定したところ,ともにicmF欠損株が高値を示した.FISH法により視覚的に観察した結果からも,icmF欠損株の感染量が多いことが確認された.一方で,炎症性サイトカインの測定をしたところ,いずれのサイトカインにおいてもT6SSを有する野生株で発現量が多い結果が得られた.野生株は感染している菌量が少ないにも関わらず,高い炎症反応が起きているため,T6SSは何らかのエフェクターを産生し,炎症誘発に関与している可能性が示唆された.