[ODP-142] ヒト肺由来線維芽細胞に対する結核菌の細胞傷害活性の解析
【背景・目的】結核症の病態形成において上皮細胞や繊維芽細胞の役割が近年明らかになってきた.本研究では,non-professional貪食細胞であるヒト肺線維芽細胞による結核菌の貪食と宿主細胞死におけるインフラマソームの役割について検討した.
【方法】ヒト型結核菌強毒株H37Rvをヒト肺由来線維芽細胞株MRC-5に感染後,透過型電子顕微鏡で観察した.インフラマソーム活性化の解析には阻害剤を用いた.細胞死はクリスタルバイオレット染色法,各種サイトカインの濃度はELISA法で測定した.RNA抽出はTRizol試薬を用いて行った.細胞傷害活性は生菌感染2日目に観察されることから,感染2日目の宿主細胞と菌からRNAを抽出しRNA発現解析を試みた.
【結果・考察】結核菌感染24時間後において,宿主細胞内に菌が確認された.経時的変化において,宿主細胞死,IL-6とIL-8の産生,および菌の貪食は相関していた.結核菌感染による宿主細胞の炎症性サイトカインの発現上昇はRNAseqとRNase protection assayの結果からも確認された.感染による宿主細胞死はNLRP3阻害剤により阻害された.以上のことから本細胞死はパイロトーシスであることが示唆された.結核菌感染による肺線維芽細胞のパイロトーシスは,肺胞近傍における持続的な炎症反応による空洞形成に関与していることが推察された.