[ODP-208] Analysis of antimicrobial-resistant bacteria derived from sewage effluent
【背景と目的】薬剤耐性菌の動向を調べるため,One Healthの概念に基づいてヒト,動物,食品,環境などさまざまなサンプルより耐性菌を分離し,解析を進めてきた.本研究では,下水処理施設の放流水より薬剤耐性菌を分離し,解析を行った.
【材料と方法】広島市(5カ所)と東広島市(1カ所)の下水処理施設の放流口付近より環境水(河川水または海水)を採取し,薬剤耐性菌を分離した.得られた菌株について,β-ラクタマーゼ遺伝子を中心とした複数の薬剤耐性遺伝子を同時に検出可能なMultiplex PCR法によって耐性遺伝子の検出を行った.blaTEM遺伝子またはblaCTX-M遺伝子が陽性の株については,short readによるドラフトゲノム解析を行った.
【結果と考察】各採水サンプルにおける一般生菌数とアンピシリン耐性菌数には,ばらつきがあり,アンピシリン耐性率は0.3%から27.8%と大きな開きがあった.耐性遺伝子解析の結果,TEM陽性株が22株,CTX-M陽性株が16株,AmpC陽性株が16株,SHV陽性株が4株,OXA陽性株が1株,クラス1インテグロン保有株が31株,クラス2インテグロン保有株が2株などの分離株が得られた.これらの菌株の中から同一サンプルから分離された類似の菌株を除いた26株(大腸菌22株,大腸菌以外4株)のTEMまたはCTX-M陽性株について,ドラフトゲノム解析を行った.その結果,TEM,CTX-Mを含む複数の耐性遺伝子を含む多剤耐性菌が下水放流水を介して拡散している可能性が示唆された.
【謝辞】本研究は,内閣府食品安全委員会食品健康影響評価技術研究の補助によって行われた.