[ODP-214/W10-7] Bacteriophage-resistant variants of MRSA are resensitized to β-lactam antibiotics
【目的】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は薬剤耐性菌の中でも特に発生数が多く,世界中で問題となっている.近年,抗菌戦略としてバクテリオファージを用いたファージ療法が注目されつつある一方,細菌はファージに対しても耐性化することが知られている.そこで,MRSAのファージ耐性化機構と耐性化に伴う表現型変化について解析した.
【材料方法】臨床検体から分離されたMRSA株と黄色ブドウ球菌溶菌性ファージを液体培地中で共培養し,ファージ耐性菌を分離した.続いて次世代シーケンサーを用いてファージ耐性菌の変異遺伝子を検出した.次に耐性菌に対するファージ由来ペプチドグリカン(PGN)切断酵素の細胞壁結合性及び溶菌活性をpull-down assay及び濁度測定法によって評価した.また,LC/MS解析を実施しPGN構造の解析を実施した.さらに,薬剤感受性試験を実施し,抗菌薬感受性の変化を調査した.
【結果】変異解析の結果,ファージ耐性菌にはPGN合成酵素femAの変異が認められた.また,ファージ耐性菌に対するPGN切断酵素の結合性及び溶菌活性が低下し,LC/MS解析の結果,PGN架橋構造の変化が確認された.さらに,耐性菌で特にβラクタム系抗菌薬の感受性が大幅に回復し,メチシリン感受性となった.
【考察】femA変異はPGN構造を変化させ,ファージ由来PGN切断酵素が作用できないことによりファージ耐性を獲得した一方,βラクタム系抗菌薬存在下ではPGN架橋が形成できず,薬剤感受性が回復したと考えられる.つまり,MRSAにおいてファージ耐性化と抗菌薬感受性の上昇はトレードオフの関係にあることが推察され,ファージ耐性を逆手に取った新たなファージ療法の展開が期待される.