The 95th Annual Meeting of Japanese Society for Bacteriology

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Symposium

[S4] Symposium 4
Current status and prospects of biological defense research

Wed. Mar 30, 2022 9:15 AM - 11:45 AM Channel 1

Conveners: Ichiro Nakagawa(Kyoto University), Yuki Kinjyo(Jikei Medical University)

Co-Sponsor: Japanese Society for Host Defense Research

[S4-3] A nutritional view of host-parasite coevolution in malaria

Hirotaka Kanuka (Dept. Trop. Med., Jikei Univ., Sch. Med.)

寄生虫(parasite)は,“para(傍らで)”と“site(食べる)”というラテン語の語源が示す通り,生育に必要な栄養素を感染した宿主に依存する生物である.マラリアは,Plasmodium属の原虫によって引き起こされる疾患であり,蚊によって媒介される.その中でも,熱帯熱マラリア原虫は,感染した宿主(人間)に重篤な症状をもたらし,世界で年間40万人が死亡している.その生活環に自由生活性ステージを持たないマラリア原虫にとって,宿主を殺すことは,種の保存において不利に働くはずである.マラリア原虫を運ぶ蚊が,地球上で最も人類を殺している生物と名指しされて久しいが,その事実は,マラリア原虫が宿主とが共倒れになっている,一見矛盾した現象の裏返しである. 大半のアミノ酸合成経路を欠くマラリア原虫は,哺乳類の赤血球中にて分裂・増殖する際,アミノ酸源の多くをヘモグロビンの分解に依存する.ヘモグロビンに含まれていないイソロイシンなど一部のアミノ酸については,血漿中から血球内へと取り込まれ,利用される.一般的に,感染症の重症度と宿主の栄養状態は反比例の関係にあるが,マラリアはむしろその逆の性質を示す.これは,数万年以上に渡り展開されてきた,寄生虫としてのマラリア原虫とその宿主としての人間との,栄養素を巡る共進化の結果と考えられる.とすれば,熱帯熱マラリア原虫と人間との大いなる不仲は今なぜ起こり続けているのか.我々は,齧歯類モデルを中心に,栄養学的見地からその謎について研究を進めている.栄養を搾取するために寄生虫が果たした共進化とその破綻の可能性について,我々の最新の知見を踏まえて議論したい.