大会長挨拶
自立支援介護もパンデミック

第19・20回日本自立支援介護・パワーリハ学術大会
大会長 竹内 孝仁
一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会
会長
竹内 孝仁(たけうち たかひと、1941年(昭和16年)2月25日 -
2016年11月、政府の未来投資会議で“日本の介護を従来の出来ないことを補う介護から出来ないことを出来る介護、つまり自立支援介護にパラダイムシフトする”との宣言がなされ、2018年度の介護保険改正からこれに見合う介護報酬上の改正が始まり2021年改正では介護保険全体を「自立支援・重度化防止」を柱とすることが掲げられてきました。この国の流れを受けて、最近では自立支援介護を実施するか否かによって、その施設の経営が左右されることも明らかになってきました。長い間、自立支援介護を実行することは介護度が変化(軽度化)し、介護報酬が減って施設経営にマイナスになるといわれ続けてきましたが、それは“虚(うそ)”であることが明らかになってきました。実際のところ自立支援介護は疾病予防に働き、入院による稼働率低下を防いで収入を安定させ収支を黒字に変えていきます。
こうした国内の状況とは別に、技能実習生や外国人労働者(特定技能者)の導入を通して、彼らにどのような介護を実践(習得)してもらうのかという問題が持ち上がり、このことは技能実習生らが将来母国に帰還したときの介護のあり方を決定づけるものと見なされております。アジアはどこも急速な高齢化が進行中で、若者の就労先の1つとしての日本と、そこで掴んだ技能を近い将来の母国に役立てるという一石二鳥の一石が自立支援介護だという訳です。
中国は少し事情が異なり、住宅投資が行き詰り、打開策の1つとして資産階級向けの有料老人ホームが乱立過当競争となり、その生き残り策として日式(日本式)介護つまり自立支援介護に大いなる注目が集まっているという訳です。実際に“自立支援介護の施設を見学したい”という中国人ツアーはひっきりなしにやってきますし、わが学会の指導のもとに本格的な自立支援介護の研修を行いたい、そのための研修センターの設立などの相談も寄せられております。
自立支援介護はもはや日本国内のみのものではなくなっており、新型コロナのようにパンデミックを起こし、ただしこちらは世界の高齢者と社会の救世主として広まろうとしています。