水文・水資源学会 日本水文科学会2023年度研究発表会

(2日目)特別講演会「有明海・諫早湾における流動特性および水質動態に関する現地観測について」

日 時:令和5年(2023 年)9月4日() 1620分~1720

場 所:出島メッセ長崎 口頭発表会場 (101(A)(B))

講師:
夛田彰秀(長崎大学 教育開発推進機構 大学教育イノベーションセンター教授(センター長))

タイトル:有明海・諫早湾における流動特性および水質動態に関する現地観測について


概要:
 長崎県では
戦後食糧増産や防災(高潮)を目的とした「諫早湾干拓事業」が計画されたものの漁業関係者等から当該事業に伴う有明海への悪影響が大いに懸念されていた.そのような中国営諫早湾干拓事業は平成元年(1989年)に着工され平成19年(2007年)11月に竣工した.これに伴って諫早湾の湾奥部3,550 haが閉め切られるとともに942 haの干陸地と2,608 haの調整池が造成された.この間平成9年(1997年)4月には「潮受け堤防」による“潮止め”が行われ平成10年(1998年)10月に総延長7.05 km堤防天端の標高が7.0 mの「潮受け堤防」が完成した.さらに2000年11月から2001年2月にかけて発生した珪藻赤潮に伴う養殖ノリの不作(色落ち問題)から「有明海異変」と諫早湾干拓事業との因果関係が取り沙汰されるようになり司法の場において争われてきた.
 本講演では
上述した「有明海異変」の原因および対応策を明らかにするため約20年間に渡って有明海および諫早湾において流動特性や水質動態の現地観測を実施してきた結果について紹介する予定である.特にADCP(超音波ドップラー流速計)やDBF海洋レーダー((財)電力中央研究所が開発)を駆使した流況観測の成果および塩分&水温、溶存酸素濃度(DO)やクロロフィル-a濃度(Chl-a)等に代表される各種水質指標の動態と成層度や貧酸素水塊の出現赤潮発生との関連性についても言及する予定である.