第46回日本集中治療医学会学術集会

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委員会報告

[CR3] 委員会報告3
(集中治療早期リハビリテーション委員会) 集中治療室におけるリハビリテーションの現状調査報告と今後の課題

Sat. Mar 2, 2019 11:25 AM - 12:05 PM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:尾﨑 孝平(神戸百年記念病院 麻酔集中治療部)

[CR3-2] 調査報告からの課題~リハビリテーション科医の立場より~

笠井 史人 (昭和大学病院リハビリテーション科)

 近年、集中治療領域での早期リハビリテーションが注目されている。その中で「根拠に基づくエキスパートコンセンサス」が上梓された。今回はこのエキスパートコンセンサス出版の影響を含めた現状調査報告を行うわけだが、その結果から導き出される課題をリハビリテーション科専門医の立場で述べる。本抄録執筆中の現在もまだ調査は進行形であるため、結果は学術集会での委員会報告セッションで当日発表する。
 このエキスパートコンセンサス編纂の目的は、集中治療室内での早期離床・リハビリテーションの普及・啓発である。これは現場からの要請とこの分野の発展を物語っている。しかしこのような流れになることは20年前では想像し難かった。当時でもリハビリテーションの早期介入の重要性は常識であったし、循環・呼吸器等の内部障害へのリスク管理や具体的なアプローチ方法は検討されていた。当時と近年の最も大きな差は、本分野に従事するマンパワーの増大だと考えている。必要な部署に必要な人材が配置できるようになってきた。しかし、その現場には十分な教育システムの導入が急務になったともいえる。
 1999年当時、理学療法士(PT)は23,873人であったが、2018年には161,476人と約8倍になっている。ちなみに同時代のリハビリテーション科専門医は709人と2,366人で飛躍的に増えたものの約3倍に留まっている。PT:リハ医比率は開いていくばかりである。リハビリテーション処方を誰が出すべきかという問題もさることながら、PTをはじめとするスタッフの医療安全を保障しつつ、診療スキルを上げ、学術的にも高めていく必要がある。
 前述の数値は集中治療分野に特化した話ではないが、特に発展のスピードが速いこの分野だからこそ、対策の構築の重要性が高まる。ICUで安全な早期リハビリテーションを行うためには、集中治療医とリハビリテーション科医が協力し合うことが肝要であり、それが実現すればリハビリテーションスタッフは安心して診療に取り組める。それがICUでの早期リハビリテーションを広く普及させるカギになるだろう。