第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演セッション

[ELS1] 教育講演セッション1(ARDS診療ガイドライン作成委員会企画) ARDS診療ガイドラインの展望 リレートーク

2019年3月1日(金) 11:20 〜 12:20 第19会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール2)

座長:倉橋 清泰(国際医療福祉大学医学部 麻酔・集中治療医学講座)

[ELS1-1] ARDS診療ガイドライン2021へ向けて、GRADEシステムの課題と展望

青木 善孝1,2 (1.浜松医科大学医学部附属病院 集中治療部, 2.静岡県立総合病院 集中治療センター)

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2004年浜松医科大学卒業
2年間初期研修を経て2006年浜松医科大学麻酔・蘇生学講座入局
名古屋掖済会病院、富士宮市立病院、浜松医科大学医学部附属病院、藤枝市立総合病院を経て2014年静岡県立総合病院で集中治療センターの新規設立
2019年浜松医科大学医学部附属病院 集中治療部 助教
日本麻酔科学会指導医、日本集中治療医学会専門医、米国集中治療医学会FCCSインストラクター、日本集中治療医学会RRSハンズオンインストラクター、日本集中治療医学会JIPAD-WGオブザーバー、ARDS2016&J-SSCG2020ガイドライン作成委員
ここ数年で診療ガイドラインをとりまく環境は大きく変化し、本邦でもGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)システムを採用した診療ガイドラインは目新しいものではなくなった。GRADEシステムとはエビデンスの質と推奨の強さが明確に区別される、従来のグレーディングシステムとは一線を画する世界中に受け入れられた透明性の高い診療ガイドライン作成方法である。GRADEシステムは答えるべき臨床疑問(Clinical Questions)を明確化し、既存の文献を系統的に収集(Systematic Review, SR)、バイアスのリスクを評価し、重要なアウトカムごとにメタ解析を実施する。それらをエビデンス総体として集約し、当該領域の専門医だけでなく多様な背景をもつメンバーによるパネル(作成委員会)が総合的な視点から「推奨」を決定することが求められる。前版ARDS診療ガイドライン2016(ARDS2016)の作成開始時の2014年にはまだ本邦にGRADEシステムを採用した医科の診療ガイドラインは存在しなかったことを考えると、時代を先取りした革新的な診療ガイドラインであったと言える。ARDS2016ではGRADEを採用しガイドライン作成方法専門家や外部評価委員、多職種パネリストなどを招聘して従来の作成方法と明確に異なる手順をとる一方、SR作業の知識と技量をもった人材不足により作成完了までに時間を必要とした、GRADEの準拠さが低いと専門家から批判を受けたなど課題が残ったことも事実である。本発表ではARDS2016を題材にその作成手順をGRADEの視点から批判的に吟味したうえで課題を抽出し、次回改訂への見通しついて解説する。
またGRADEシステムはGRADE working groupを中心に国際的な動向を踏まえアップデートされている。ARDS2016ではRevMan5.0およびGRADEpro Guideline Development Toolを利用したが、次回改訂に向けて(利用できるかどうか不明ではあるが)Risk of bias 2.0やNetwork meta-analysisの機能を備えた次世代ソフトウェアRevMan webが展開されているため、紹介したい。また「次世代のために」という学会テーマに即して、間違いなく今後の主力となるであろう人工知能(Artificial Intelligence)によるSRについても概論を紹介したい。