第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演セッション

[ELS2] 教育講演セッション2(CCU委員会企画) 集中治療専門医に必要な最新の肺血栓塞栓症の管理を学ぶ

2019年3月1日(金) 16:15 〜 17:15 第19会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール2)

座長:笠岡 俊志(熊本大学医学部附属病院 救急部), 田原 良雄(独立行政法人 国立循環器病研究センター心臓血管内科)

[ELS2-1] 最新の肺塞栓症ガイドラインから学ぶ

山本 剛 (日本医科大学付属病院 心臓血管集中治療科)

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1993年3月 日本医科大学医学部 卒業
1993年5月 日本医科大学第一内科 入局
2000月1月 日本医科大学付属病院集中治療室 勤務
2012年10月 同 講師
2013年7月  同 心臓血管集中治療科 講師
現在に至る。
日本集中治療医学会(評議員、CCU委員会委員、Editorial Board, Journal of Intensive Care)。
専門分野は循環器救急・集中治療、静脈血栓塞栓症。
高リスクの急性肺塞栓症(pulmonary embolism; PE)では急性の右心不全からショックに陥る。適切な治療が行われないと、多くは数時間以内に死亡するとされ、救命のためには迅速で的確な診断、治療が重要になる。初期治療では、酸素投与、未分画ヘパリンボーラス、500~1000mlの容量負荷を行う。循環虚脱例には経皮的心肺補助装置を導入する。未分画ヘパリンはPEが疑われた時点で、80単位/kgあるいは5000単位を単回静脈投与し、その後18単位/kg/時間で持続静注し、活性化部分トロンボプラスチンが対照値の1.5-2.5倍に延長するように用量調節する。高リスク例への標準治療は血栓溶解療法で、本邦ではmutant t-PAのモンテプラーゼを投与する。血栓溶解療法では、肺動脈内血栓が速やかに溶解され、肺動脈血管抵抗が減少し、血行動態や右室機能の早期改善がもたらされる。また、肺血流の増加に伴いガス交換も改善する。血栓溶解療法が無効な場合や血栓溶解療法が禁忌である場合にはカテーテル治療や外科的治療が適応になる。カテーテル治療と外科的血栓摘除術、どちらを選択するかは、経皮的心肺補助装置の有無、手技への熟練度やスタンバイまでの時間によって決められる。欧州心臓病学会のガイドラインでは、ショック例で血栓溶解療法が禁忌あるいは血栓溶解療法が不成功であった症例へには外科的血栓摘除術(Class I)を、その代替治療としてカテーテル治療を考慮する(Class IIa)とされている。下大静脈フィルターの一般的な適応は、抗凝固療法禁忌例と適切な抗凝固療法にても再発した例である。恒久型下大静脈フィルターでは慢性期のフィルター部血栓形成や下肢深部静脈血栓症の再発が問題になるため、一時的な適応であれば回収可能型を選択し、実際に回収を積極的に試みるよう勧められている。アメリカ心臓協会のステートメントでは、高リスクPEへのフィルター留置は、「考慮してもよい」の勧告レベルに留まっている。ICUでは重症度の高い循環虚脱例や血栓溶解薬の禁忌例が少なくないため、集中治療医に加え、循環器内科医、放射線科医、心臓血管外科医、臨床工学技士などから構成されるPE Response Teamを作り、症例に応じた最適な治療が迅速に提供できるよう集学的にアプローチすることが強調されている。