第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

ジョイントパネルディスカッション

[JPD1] ジョイントパネルディスカッション1
(日本集中治療医学会・日本救急医学会/日本版敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会企画) 日本版敗血症診療ガイドライン2020を展望する:New Challenge!

2019年3月2日(土) 14:00 〜 16:00 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:江木 盛時(神戸大学医学部附属病院麻酔科), 小倉 裕司(大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター)

[JPD1-4] J-SSCG2020; 注目領域Pick Up! Patients Centered Therapy and Family Care

西田 修, 江木 盛時, 小倉 裕司, 安宅 一晃, 井上 茂亮, 射場 敏明, 垣花 泰之, 川崎 達也, 久志本 成樹, 黒田 泰弘, 小谷 穣治, 志馬 伸朗, 谷口 巧, 鶴田 良介, 土井 研人, 土井 松幸, 中田 孝明, 中根 正樹, 藤島 清太郎, 細川 直登, 升田 好樹, 松嶋 麻子, 松田 直之, 矢田部 智昭, 田中 裕 (日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会)

集中治療領域における比較的短期の生命予後は、集中治療医学の発展とエビデンスの集積、診療ガイドラインの普及などにより近年目覚ましく改善してきている。一方で、敗血症などの集中治療を必要とする多くの重症患者は、ICU在室中あるいはICU退室後、さらには退院後に生じる運動機能・認知機能・精神の障害によって苦しんでいる(Post intensive care syndrome:PICS)ことが判明し大きな話題になっている。これを踏まえてJ-SSCG2016では、世界に先駆けてPICSを独立した章として取り上げた。さらには、PICSは患者と生活をともにする家族の精神にも影響を与える(PICS-F)ことが認識され始めており、これら問題の裾野の広さは計り知れないものとなってきている。また、近年の痛み・不穏・せん妄の管理の向上とも深い関わりがあるが、ICU滞在中の、「医療者と患者・家族の関係」、「患者と家族の関わり」に関しても課題が浮き彫りになりつつある。集中治療の対象は、われわれ治療者と同じ、生活者である人間である。救命の命題のもとに、人間性を無視して治療者側の都合で診療する時代はすでに終わっている。ICUは集中治療の場であるが、患者にとっての生活の場でもある。ICU在室中からどのような配慮が必要なのか?家族との関わりはどうあるべきなのか?家族の精神的なサポートのためには医療従事者が何を行うべきなのか?考えるべき臨床的課題は多い。これらの背景をもとに、J-SSCG2020では、「Patients Centered Therapy and Family Care」を新たに独立した章として取り上げた。「ICU-AW・PICS・早期リハビリテーション」では主に運動機能に関連した内容を扱い、「Patients Centered Therapy and Family Care」では、患者と家族の精神に関連した内容、ICUにおける療養環境やEnd of Lifeに関する内容を扱う領域と位置づけている。班の結成にあたり、公募により多職種によるWGを構成した。さらにメンバーの多くが、「ICU-AW・PICS・早期リハビリテーション」の双方を担当し連携を密に図れるようにした。Web会議などを重ねたところ、多職種混成チームならではの数多くの臨床的疑問(CQ)が抽出された。J-SSCG2020全体でのCQの総数・バランスを考え、下記6つのCQに絞りこんでパブリックコメントを募集することになった。
CQ:1 『患者と家族に対して、PICSおよびPICS-Fに関する情報提供をどのように行うか?』CQ:2『患者と家族に対して、 ICU日記を用いたPICSおよびPICS-F予防を行うか?』CQ:3『PICS予防として身体拘束(抑制)を避けるべきか?』
CQ:4『睡眠ケアとして非薬物的睡眠管理を行うか?』
CQ:5『家族の面会制限を行うか?』
CQ:6『患者の価値観について、(患者と)家族を含めたカンファレンスをどのように行うか?』
これらの領域はエビデンスに乏しい領域であるが、今後、敗血症診療、集中治療の質を向上し得る、非常に重要な領域ととらえている。将来的にはガイドラインに留まらず、「患者中心の治療・家族の精神的サポート」はどのようにあるべきかを今後とも模索するための礎となることを期待している。