[JPD1-5] JSSCG2020: 注目領域Pick Up! Sepsis Treatment System
日本版敗血症診療ガイドラインがはじめて作製されたのが2012年であり,2020年に向けて2回目の改定を開始している.海外のガイドラインであるSSCGの普及による標準治療の確立は敗血症の生命予後の改善に寄与しているのは間違いない.2016年より臓器障害を来した感染症という診断基準へ改変された敗血症であるが,感染症によるSIRS状態という定義に比べより重症の患者を対象とする敗血症診療へと変化している可能性が考えられる.本邦での敗血症の生命予後をさらに改善する診療指針となるべくあらたに敗血症診療システム(Sepsis Treatment System : STS)が次期ガイドライン内で提示される項目となった.STSの基本的な概念は早期に敗血症を覚知し,適切な時期,場所,体制にて診療を行うことで重症である敗血症の治療成績の向上に繋げることである.また,敗血症に対する予防や一般市民や敗血症治療を専門としない医師,研修医を含む医療従事者に対する啓蒙活動も最終的な生命予後の改善に繋がる可能性を期待し,あらたにガイドラインの中で言及されることになった.STSの中でも重要と考えられるのは医師以外のメディカルスタッフも加えた多職種連携である.即ち一般病棟あるいは重症患者の治療に長けていない一般病院や施設でいかに早期に敗血症を疑うかという点である.現在では一般病棟での敗血症を疑う一つのtoolとしてquick SOFAの使用が提唱されている.また,敗血症のみならず一般病棟でのバイタルサインの異常に基づいた心停止へ進展を予防する迅速対応システム起動の基準として用いられるnational early warning score (NEWS)やSepsis-1の診断基準に用いられてきたSIRSのcriteriaなどを用いた敗血症早期覚知スコアを用いたシステムの導入である.敗血症を早期に疑うことで次に行う行動は集中治療を行う部門や施設への転棟・転院である.さらに集中治療を行う体制,すなわちclosed ICUやopen ICU,専従する医師以外のメディカルスタッフの体制などについての推奨を提示していく.最後に,Global Sepsis Allianceの結成に伴い行われている世界敗血症デーなどの取り組みの目的や背景について紹介するとともに,これらの一連のシステムの構築や個々の敗血症に対する治療のoutcomeに対する指標をどのように行うか,などの社会的な評価も含めたclinical questionを作成し推奨の回答を解説する.