[JPD1-7] JSSCG2020;GLのバンドル化への期待 Expectation for bundling JSSCG2020
我が国における敗血症診療の普及を目指した日本版敗血症診療ガイドライン2016(JSSCG2016)が、2016年12月26日に発行された。このガイドラインは、Mindsにおける診療ガイドラインの評価選定や発刊後に行われた「JSSCG2016の使用に関する実態調査」においても高い評価を得ている。しかし、一般医療従事者への普及に関しては、「エキスパート以外には診療フローチャートや図解による解説があった方が使いやすい」という意見が出されている。JSSCG2016では、重要臨床課題ごとに推奨度が示されていたが、どの課題が重要でどの順序で診療を進めていけば良いのかなど、一般医療従事者が最も知りたい診療の流れが示されていない。目の前の敗血症性ショック患者に対して、循環管理を最優先することに間違いはないが、通常のショックとは異なり循環管理だけでなく、病原体を認知し制御する感染対策も同時に必要である。つまり、敗血症性ショックに対しては、 (1)初期蘇生を行いショックからの早期離脱を図ること、(2)適正抗菌薬使用、感染巣ドレナージ等により原因菌、感染巣を早期にコントロールすること、のどちらも必須の要件であり、しかも時間的要素を考慮したショック管理が必要である。敗血症性ショックへの対応は、まさに時間との勝負であり、時間軸を考慮しながら診療フローに沿って流れるような初期蘇生と感染対策を同時に行っていく必要がある。JSSCG2016では、Riversらが示したEGDT (early-goal directed therapy)の有用性が検討された。EGDTとは、CVP 8~12mmHg、平均血圧>65mmHgを目標に、大量輸液と血管収縮薬を中心とした蘇生法を開始し、尿量>0.5mL/kg/h、ScvO2>70%が達成できない場合は、貧血に対してヘモグロビン値>7g/dLを維持するように輸血を行い、心機能が低下している場合は、強心薬を使用しながら6時間以内に設定した目標値を達成するという目標達成指向型管理法に時間的要素を組み込んだ画期的なプロトコルである。JSSCG2016では、「初期蘇生に EGDT を用いるか?」のCQに対して、「敗血症,敗血症性ショックの初期蘇生に EGDTを実施しないことを弱く推奨する(2A)」と記載している。これは、EGDTの概念を否定したものではなく、時間の概念を理解し循環管理を行うのであれば、CVPやScvO2値の目標達成を必須とするEGDTの管理は必ずしも必要ではないことを意味している。しかし、近年は3-hourバンドル、The Surviving Sepsis Campaign Bundle: 2018 Updateにおいては、1-hourバンドルが提唱され、時間の重要性が今まで以上に強調されてきており、その点からも、「時間を考慮したバンドル化」と「診療フローの見える化」は、一般医療従事者への普及を考慮したガイドライン作成においては、極めて重要なポイントである。JSSCG2020ではその点も考慮した世界に発信できる斬新な敗血症ガイドラインを期待したい。