第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

ジョイントシンポジウム

[JSY3] ジョイントシンポジウム3
(日本集中治療医学会・日本救急医学会/神経集中治療ガイドラン作成委員会企画) 重症heat strokeに対する神経集中治療2019:社会復帰率を上げるために

2019年3月1日(金) 14:00 〜 16:00 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:黒田 泰弘(香川大学医学部附属病院救命救急センター), 清水 敬樹(東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)

[JSY3-2] 熱中症の重症度評価とバイオマーカー

島崎 淳也 (大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター)

ライブ配信】

【背景】熱中症は重症化すると播種性血管内凝固や多臓器障害を来す重篤な疾患だが、現時点で利用可能な客観的な熱中症の重症度指標は存在しない。日本救急医学会熱中症重症度分類は簡易的な分類であり、特に最重症であるはずの3度熱中症においても重症度の程度が大きく異なる。今回、(1)日本救急医学会のHeatStroke Study(HsS)2014/2017/2018のデータを用いて熱中症の重症度評価・予後予測としてAPACHEIIスコア、SOFAスコアが有効かどうか検討した。(2)また、われわれが実施した重症熱中症多施設研究のデータを用いて、熱中症急性期において凝固マーカーおよびHMGB1・Histone H3を測定し、バイオマーカーとして利用可能かどうか検討を行った。【結果1】HsS2014/2017/2018では全国の登録施設に熱中症の診断で入院となった患者を対象とした。登録症例は合計1059例であった。男性748例(70.6%)、労作性熱中症463例(43.7%)、非労作性571例(53.9%)、平均年齢61.3±23.3歳、来院時平均体温38.3±1.8℃であった。うち3度熱中症794例、急性期DICスコア4点以上の症例は116例であった。転帰は院内死亡56例であった。全症例の来院時の平均APACHEIIスコア14.7、平均SOFAスコア4.0であった。来院時のSOFAスコア、APACHEIIスコアの院内死亡に対するROC曲線のAUC(AUC[95%CI])は、それぞれSOFAが0.88[0.83-0.93]、APACHEIIが0.87[0.82-0.92]、であった。【結果2】2012-16年に大阪大学および研究協力施設11施設に搬送された深部体温40℃以上、挿管管理をした重症熱中症患者の来院時・来院3時間後・6時間後・12-24時間後・60-72時間後に採血を行い、HMGB1、HisotneH3、凝固マーカーの経時的測定を行った。登録症例は28症例。平均年齢68.1歳、来院時の平均体温40.1℃、死亡3例であった。凝固マーカーは、TATは来院時より上昇を認め、PICは来院がピークで以降漸減しており、PAI-1は来院時から漸増していた。HMGB1は来院時にピークを認めたが、HistoneH3は6時間目にピークを認めた。来院時のHMGB1値とAPACHEIIスコア、HistoneH3のピーク値と経過中の急性期DICスコアの最大値は高い相関を認めた(それぞれr=0.59・p<0.01、r=0.61・p=0.01)。【考察】来院時のAPACHEIIスコア、SOFAスコアはともに熱中症の重症度評価・死亡予測スコアとして有効であった。また熱中症は早期から凝固線溶が亢進しており、初期には線溶亢進状態となる。HMGB1およびHisotneは熱中症の重症度やDIC進行のマーカーとして利用できる可能性がある。