[JSY6-2] 中毒治療に対する急性血液浄化療法
【 ライブ配信】
急性中毒に対する治療の原則は、中毒毒物の情報を速やかに詳細に手に入れるとともに、未吸収物質を除去し、既に吸収された物質を排出することにある。血液浄化療法は血液中の毒薬物の速やかな除去、毒性代謝産物の速やかな除去、中毒に起因する臓器障害で蓄積した代謝物の除去、水・電解質バランスの管理、有用物質の補充などを目的に施行する。急性中毒に対する血液浄化戦略としては、血液浄化療法導入のタイミングと蛋白結合物質への対応が鍵を握るであろう。血液浄化療法をいつ開始するかについては、原因物質の種類、血中濃度、臨床症状などを参考に総合的に判断する。また、原因物質の分子量、分布容量、蛋白結合率などに応じて最適な施行方法が選択されるべきである。血液浄化療法は血液吸着(DHP)、血液透析 (HD)、血液濾過(HF)、血漿交換:(PE)の4種類に大別される。さらに上記の組み合わせには持続的血液濾過透析(CHDF)などがある。DHPの除去効率は中毒物質の分子量、蛋白結合率に左右されない。また、濃度勾配も利用しないため、血中濃度が低い場合でも物質除去が可能である。持続的血液濾過(CHF)やCHDFでは心血管系に与える影響が小さいために低血圧の患者にも使用しやすく、治療終了後の血中濃度再上昇も起こりにくい。ほとんど全ての中毒物質は蛋白と結合し、蛋白結合率が0であるのはアルコール類やリチウムなど非常に少ない。では、それ以外の中毒症例では全てにPEを行うかとなるとPEの短所も考慮しなければならない。すなわち、PEでは大量の血漿製剤を使用するため,コストが高く、膜孔が大きい分、フィブリノゲン、種々のホルモンなど生体にとって必要なものまで除去されてしまう。そこで、我々はPlasma filtration with dialysis (PDF)療法を行っている。PDFは選択的PEを行いながら、その中空糸外側に透析液を流す血液浄化療法である。そのPDFを24時間かけて施行するcontinuous PDFも循環不安定な病態に応用できる。