第46回日本集中治療医学会学術集会

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ジョイントシンポジウム

[JSY6] ジョイントシンポジウム6
(日本集中治療医学会・日本中毒学会) 中毒と血液浄化

Sun. Mar 3, 2019 10:50 AM - 12:20 PM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:伊関 憲(公立大学法人福島県立医科大学附属病院高度救命救急センター), 土井 研人(東京大学医学部救急科学)

[JSY6-3] 中毒医療の実際-カフェイン中毒から

上條 吉人 (埼玉医科大学病院 救急センター・中毒センター)

ライブ配信】

近年、カフェインの過量摂取により中毒症状を呈して救急搬送される患者が増加している。演者らの施行した多施設共同調査によれば、患者の数は2013年4月以降に急増し、患者の年齢は中間値が25歳と若く、患者のほとんど(96%)はカフェインを含有している錠剤を服用していた。初診時には25%以上の患者に頻呼吸、頻脈、意識障害、高血糖、低カリウム血症、低リン血症、高乳酸血症が見られ、経過中には25%以上の患者に悪心・嘔吐、不穏・焦燥、洞性頻脈がみられた。カフェインの摂取量が6.0 g以上、または血中濃度が200 mg/L以上であった患者のうち7名のは心停止となり、そのうち3名が死亡した。心肺停止を生じた患者は全例ともカフェインを含有している錠剤を摂取していた。演者はカフェインを含有している錠剤の販売規制は必須と考えている。ところで、これまでの報告から血液透析法(hemodialysis、HD)および血液灌流法(direct hemoperfusion、DHP)のいずれでも重症カフェイン中毒患者から効率よくカフェインの排泄を促進することができる。しかしながら、どちらの方法の方がより優れているかは明らかになっていない。ここでは2症例、すなわちHDで治療された1例およびDHPで治療された1例を呈示するが、いずれの症例でも経時的にカラムの前後のカフェイン血中濃度をGC/MSまたはLC/MS/MSを用いて測定し、カフェインのクリアランスを算出した。HDとは異なり、DHPではカラム後のカフェイン血中濃度はほぼゼロであったが、カフェインのクリアランスはHDの方が大きかった。これは、HDでは容易に200 mL/分の脱血量(blood flow rate、QB)が得られるのに、DHPでは150 mL/分以上のQBを得るのは困難であったことによる。DHPは血小板減少などの合併症が多い、カラムの値段が10万円台vs.数千円であることからわかるようにコストが高い、熟練した技師が少ない、さらに今回示したようにクリアランスが小さいことを考慮すると重症カフェイン中毒の治療にはHDを第1選択とすべきである。