第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

教育セミナー(ランチョン)

[LS16] 教育セミナー(ランチョン)16

DIC診断のPitfall

Sat. Mar 2, 2019 12:40 PM - 1:40 PM 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:丸藤 哲(札幌東徳洲会病院侵襲制御救急センター)

共催:アレクシオンファーマ合同会社

[LS16-1] DICに潜むTMAの併存

朝倉 英策 (金沢大学附属病院 高密度無菌治療部)

播種性血管内凝固症候群(DIC)は、基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし、全身と主として細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態である。進行すると、消費性凝固障害(血小板や凝固因子の低下)や臨床症状(出血症状、臓器症状)が見られるようになる。ただし、基礎疾患によってDICの病態には差異が見られる。「線溶抑制型DIC」は、凝固活性化は高度であるが線溶活性化は軽度に留まり、臓器症状はしばしば高度であるが出血症状は比較的少ない。敗血症に合併したDICに代表される。「線溶亢進型DIC」は、凝固・線溶活性化ともに高度であり、出血症状はしばしば高度であるが臓器症状は比較的少ない。急性前骨髄球性白血病(APL)や大動脈瘤に合併したDICに代表される。
 血栓性微小血管症(TMA)は、血小板数低下、溶血性貧血、臓器障害(腎、脳など)を来たす。DICが凝固活性化を主病態とするのに対して、TMAは血小板活性化を主病態とする。TMAの中には、TTP(先天性、後天性)、STEC-HUS(志賀毒素産生性大腸菌に起因)、非典型HUS(aHUS:補体制御異常の病態)、二次性TMAが含まれる。
 本来は、DICとTMAは異なった病態であるが、急激な血小板数低下や臓器障害を来たす点で共通しており、鑑別に難渋することも少なくない。また、TTPの確診例であってもDIC診断基準を満たす症例に遭遇したり、DICと診断された難治性症例の中に実はTMA症例が潜んでいる懸念が指摘されている。この際、溶血関連マーカー、ADAMTS13活性、抗ADAMTS13抗体、凝固線溶関連検査を駆使して鑑別するが、限界もある。例えば、PT、APTTではDICを診断することも否定することもできない。
 本セミナーでは、DICとTMAの鑑別、DIC潜むTMAの並存の可能性について、考察を試みたい。
image/LS16-1.jpg