第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育セミナー(ランチョン)

[LS6] 教育セミナー(ランチョン)6

10年を迎えた 遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤に関する 5つの疑問そして、これから

Fri. Mar 1, 2019 12:40 PM - 1:40 PM 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:射場 敏明(順天堂大学医学部救急・災害医学)

共催:旭化成ファーマ株式会社

[LS6-1] 遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤の作用機序、至適対象者、出血リスクについて考える

伊藤 隆史1,2 (1.鹿児島大学病院 救命救急センター, 2.鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 システム血栓制御学)

 遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤を投与しても、PTやAPTTなどの凝固時間は延長しないが、TATやFDPなどの凝固線溶活性化産物は低下する。この事実をどのように解釈すれば良いだろうか。トロンボモジュリンは凝固反応の初期相を抑えることなく、産生されたトロンビンの働きを利用して凝固反応にネガティブフィードバックをかけ、さらなるトロンビン産生を抑制する。このため、瞬時に進む凝固反応にはほとんど影響を及ぼさず、ゆっくりと進行する凝固反応に対して抗凝固作用を発揮するという特徴をもつ。もうひとつの特徴は、抗凝固作用が及ぶ範囲を、凝固が活性化している現場に限定し、遠隔組織に影響を持ち越さない点である。これらのことが、凝固時間や出血リスクに大きな影響を及ぼすことなく、抗凝固作用を発揮することに繋がっているのではないかと考えられる。
 では、どのような症例に遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤を投与すれば良いだろうか?急性期DIC診断基準を満たす全症例に投与すべきだろうか?DIC症例は出血リスクを伴っているが、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤投与による出血リスクの上昇を、どの程度見込む必要があるだろうか?これらの疑問に対する明快な答えはないが、これまでの知見をもとに、治療の最適化への道筋を考える。