第46回日本集中治療医学会学術集会

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看護交流集会

[NS1] 看護交流集会1
(看護ガイドライン委員会企画) 口腔ケアガイドの活用

Sat. Mar 2, 2019 10:50 AM - 11:50 AM 第19会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール2)

座長:明神 哲也(東京慈恵会医科大学医学部看護学科), 山中 真知子(京都第一赤十字病院)

[NS1-2] 歯科医師からみた口腔ケア実践ガイドのポイント

岸本 裕充 (兵庫医科大学 歯科口腔外科学講座)

ライブ配信】

ICUで管理されている患者の多くは経口摂取が制限されているため、「口腔の自浄性(=汚染物のクリアランス能)」が低下している。これは、唾液分泌および嚥下回数の低下、歯や粘膜への食物の摩擦が喪失、などが重なることによって生じる。したがって、歯垢が付着する歯だけでなく、粘膜の清掃も必要となる。特に、経口的に気管挿管されている場合には、チューブやバイトブロックの存在のため、口腔ケアを実施しにくいことに加え、閉口困難によって水分の蒸発による口腔乾燥を来し、口腔環境が悪化しやすい。
口腔を良好に管理するには、的確なアセスメントに基づく口腔ケアが重要である。「口腔ケア実践ガイド(以下、単に「ガイド」と略)」においては、1日4回もしくは6回の口腔清掃を提案している。現状では、1日3回以下しか実施していない施設が多いと思われるが、口腔の自浄性の低下を補うために、比較的短時間で可能な「維持ケア」と、良好な口腔環境を確立するための「ブラッシングケア」を組み合わせる。
ブラッシングケアにおいては、歯および粘膜に付着した汚染物を入念に除去・回収することを意識する。汚染物の回収には洗浄法と清拭法とがあり、一般に前者の方が菌量の減少には有利であるが、汚染物を含む洗浄液を誤嚥するリスクがある。これは、鎮静および気管チューブの留置に伴う咳反射の閾値の上昇があるためで、不顕性誤嚥を生じている可能性も考慮する。したがって、吸引しやすいディバイスの導入や技術力の向上を図るべきである。このブラッシングケアは1日に1~2回実施することが望ましい。
維持ケアは、ブラッシングケアによって口腔環境が良好になっていれば、実施間隔を空けることができる可能性がある。ブラッシングケアと維持ケアに共通するのは、汚染物の回収と保湿(=湿潤ケア)であり、保湿できていないと汚染物の固着を招きやすい。湿潤環境を維持するポイントは加湿と蒸発予防であり、加湿にはスプレーを使用し、蒸発予防には湿潤ジェルとサージカルマスクを活用する。
予定手術後にICUに収容される患者では、手術前から歯科が介入する周術期口腔機能管理を活用すると、良好な口腔環境が確立されているため口腔ケアを実施しやすい。