第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[O1] 一般演題・口演1
鎮痛・鎮静・せん妄 研究01

2019年3月1日(金) 10:35 〜 11:25 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:谷口 巧(金沢大学附属病院集中治療部)

[O1-3] 瞳孔記録計は集中治療室で発症したせん妄を検出できる可能性がある

上村 友二, 平手 博之, 伊藤 遥, 小笠原 治, 藤掛 数馬, 仙頭 佳起, 佐野 文昭, 井口 広靖, 草間 宣好, 祖父江 和哉 (名古屋市立大学大学院医学研究科麻酔科学・集中治療医学分野)

【背景】せん妄は、人工呼吸やICU滞在日数の延長に関与するため、早期発見および介入が重要である。手術室の研究では、術後回復室での瞳孔収縮率や拡張速度の低下は、術後せん妄と関連する可能性が指摘されている。我々は、ICU患者でも瞳孔反応の異常は、せん妄に関連するのではないかと考えた。【目的】定量的瞳孔記録計(IMI社NPi-200、以後NPi)を利用して、ICUせん妄と瞳孔反応の関連性を調査すること。【方法】後ろ向き観察研究。2016年4月1日から2018年3月31日に、対象は1.食道癌に対する食道亜全摘、2.気管挿管下でICUへ入室、3.NPiとせん妄評価を同時に施行されていた患者。除外は中枢神経系の既往、眼疾患の既往がある患者。せん妄あり群となし群に分け、NPiの測定値、評価のタイミング(ICU入室後からの時間)、患者背景(年齢、性別、体重、ASA-PS(米国麻酔学会 身体評価)、麻酔時間、ベンゾジアゼピン使用の有無、オピオイドの使用量(術中、術後)、重症度)を収集。麻酔法は硬膜外麻酔併用全身麻酔。せん妄評価はthe intensive care unit (CAM-ICU) scoreを使用。統計学的解析はカテゴリー変数にはFisher検定を用い、連続変数の比較にはMann-Whitney U検定、統計学的有意差はP値0.05以下を有意差ありとした。せん妄診断における瞳孔所見の正確性は、the Receiver Operating Curves (ROCs)とthe Area Under the Curve (AUC)を作成し、評価した。【結果】全57例のうち19例が基準を満たした。せん妄あり群が10例、なし群が9例。両群の患者背景は、年齢、レミフェンタニル総投与量に差を認めた。せん妄あり群で瞳孔収縮率 (13% vs. 18.3%, P=0.03) と平均拡張速度 (0.3 vs. 0.4mm/min, P=0.04) が低下していた。せん妄診断の正確性は、瞳孔収縮率(AUC, 0.77; 95% CI, 0.54-1)と平均拡張速度(AUC, 0.72; 95% CI, 0.44-1)で中等度だった。【結論】瞳孔収縮率と平均拡張速度は、ICUせん妄診断における客観的指標の一つとなる可能性がある。