第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 症例

[O10] 一般演題・口演10
呼吸 症例03

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:重光 胤明(大阪市立総合医療センター 救命救急センター/集中治療センター)

[O10-5] 大量喀血で心肺停止に陥ったが心拍再開し、迅速なVV-ECMO導入後に気管支動脈塞栓術で止血し救命した2例

人見 秀, 田口 茂正, 鈴木 源, 川浦 洋征, 神山 治郎, 清田 和也 (さいたま赤十字病院 高度救命救急センター 救急科)

【背景】喀血に対する治療戦略は、気道確保、健側肺の保護、出血を局所に留める、止血治療の4点が主軸となる。大量喀血は気道・呼吸・循環に影響を与え生命を脅かす病態であり、直ちに心肺停止になり得る。本来出血に対してextracorporeal membrane oxygenation(ECMO)は禁忌とされるが、通常の方法で対処しえない大量喀血に対し、ECMOを使用し救命できた報告がある。すなわち、呼吸不全に対しveno-venus(VV)-ECMO、呼吸不全に加えて循環虚脱に陥った場合はveno-arterial(VA)-ECMOを使用した報告が散見されるが、心肺停止(CPA)に陥った大量喀血症例を救命した報告はほとんどない。今回我々は、診療中に大量喀血し低酸素血症からCPAになったのでVA-ECMO適応と考えたが、ECMOプライミング中に心拍再開が得られたので迅速にVV-ECMOを導入し、止血術を実施し救命した2例を経験した。【臨床経過】症例1:COPDの既往がある67歳男性。突然自宅で喀血し搬送された。喀血が継続し気管挿管されICUに入院した。第2病日に大量喀血し換気不能、CPAとなった。VA-ECMOの準備中に自己心拍再開したが換気不能であり直ちにVV-ECMOを導入した。気管支動脈塞栓術(BAE)を施行し止血がえられ第3病日にECMO離脱した。第7病日に抜管、第17病日に独歩退院した。症例2:肺サルコイドーシスの既往がある35歳男性。自宅で喀血し当院を受診、診察中に大量喀血しCPAになった。心拍再開後の気管支鏡実施中に大量出血し、換気困難から再度CPAになった。VA-ECMO準備中に自己心拍再開したが、低酸素血症が持続したのでそのままVV-ECMOを導入した。BAEにより止血が得られ第8病日にECMO離脱した。第9病日に再度大量喀血しVV-ECMO導入、再度BAEを実施した後は喀血なく第15病日にECMO離脱、第43病日に独歩退院した。【結論】大量喀血に対するECMOはその後の止血術が前提となる。CPAに至るような大量喀血では、早期にVV-ECMOを導入し呼吸と循環を担保して止血術を実施する戦略が有効と考えられた。