第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

中枢神経

[O103] 一般演題・口演103
中枢神経05

2019年3月2日(土) 10:05 〜 10:55 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:齋藤 繁(国立大学法人群馬大学医学部附属病院麻酔科蘇生科)

[O103-1] くも膜下出血術後遅発性脳虚血の合併防止に水分Balanceおよび血清Na濃度変動管理は必要か?

和田 大和, 濱上 知宏, 藤崎 修, 前山 博輝, 松井 大作, 大江 崇史, 番匠谷 友紀, 上田 泰弘, 星野 あつみ, 小林 誠人 (公立豊岡病院 但馬救命救急センター)

【背景】くも膜下出血(SAH)発症72時間後から2週間の間に生じる脳障害である遅発性脳虚血delayed cerebral ischemia (DCI) は,合併時には神経学的予後を悪化させるため,SAH後の神経集中治療ではDCIを予防する管理が重要である.DCIは脳血管攣縮を含めた多因子が複雑に関与して生じるとされており,水分Balance管理,Na管理が重要といわれているが明らかなエビデンスはない.【目的】軽症SAH後の患者で水分Balanceおよび血清Na濃度の変動を管理することでDCIの合併を防止可能か否か提示する.【方法】2015年1月1日から2017年12月31日までに脳動脈瘤破裂によるSAH開頭クリッピング術もしくはコイル塞栓術が施行された軽症例 (WFNS1-3) の64例を対象とし,神経学的予後,水分Balance,血清Na濃度の変化幅,鉱質コルチコイド投与,NaCl投与などを検討した.DCIの定義は意識レベル低下(GCS 2点以上の低下もしくはNIHSS 2点以上の上昇),または新たな神経所見が出現し他の病態で説明できないものとした.尚,重症SAHでは水分Balance管理,Na管理はDCI発生に影響を及ぼさず,DCIを予防しても予後に大きく影響しないという先行研究より検討対象から除外した.退院時mRS 0-3を予後良好群,mRS 4-6を予後不良群とした.結果は中央値(25%-75%)で示す.【結果】予後良好群46例,予後不良群18例であった.DCI合併は9例で予後良好群3例:予後不良群6例(p<0.05)と有意差をもって予後不良群で多かった.DCIは7(4-8)病日に合併していた.年齢,動脈瘤の部位,手術方法は予後に有意差はなかった.水分Balanceおよび血清Na濃度の変化幅をDCI合併例では合併時まで,非合併例では第7病日までを比較すると,水分BalanceはDCI合併群 765 (676-997) ml/day:DCI非合併群 1073 (875-1189) (p=0.098),血清Na濃度の変化幅はDCI合併群 7 (5-10) mEq/L:DCI非合併群8 (6-10) mEq/L (p=0.64) といずれも有意差はなかった.鉱質コルチコイド投与はDCI合併群4例(44.4%):DCI非合併群38例(69.1%),投与日数は6(3.8-9)日:7.5(5.3-8.8)日といずれも有意差はなかった.NaClの投与はDCI合併群5例(55.6%):DCI非合併群37例(67.3%),投与日数は6(7-8)日:7(5-8)日と有意差はなかった.【結語】軽症SAHでもDCIを合併すると予後不良となることが示された.DCIの合併防止策として鉱質コルチコイド投与,NaCl投与を含む厳密な水分Balanceおよび血清Na濃度の変動管理は関与しないことが示唆された.