[O103-3] 【優秀演題(口演)】くも膜下出血における酒石酸プロチレリン(TRH-T)の有効性とその特徴に関する解析
【背景】くも膜下出血に伴う遷延性意識障害に対してTRH-Tはしばしば使用されるが、その有効性についての報告は少ない。
【目的】TRH-Tの有効性、及び意識障害改善に関する因子について解析すべく、当施設で加療した脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血症例を検討した。
【方法】2011年から2017年に当施設で脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で入院加療を行った208例(男性76例、平均年齢61.4歳)を調査対象とした。データ欠損例を除外し、TRH-Tを投与した97例の中で、TRH-T投与前の長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)が20点未満であった31例(男性8例)が研究対象となった。平均年齢60.7歳、Hunt and Kosnik grade(grade 1; 1例、grade 2; 12例、grade 3; 12例、grade 4; 4例、grade 5; 2例)、動脈瘤部位は前方循環が29例、Fisher group 3が30例であった。HDS-Rスコアはクリッピング術後7日目に1回目の評価を行い、1日2mgのTRH-T投与終了2日後に2回目の評価を行った。TRH-T投与前後のHDS-Rスコアを調査し、8点以上の上昇をgood outcome、8点未満の上昇をpoor outcomeと定義し、スコア改善の因子について検討を行った。なお、自然経過におけるHDS-Rスコアの改善が懸念されたことから、TRH-T投与を行わなかった同条件の11例の患者との比較も行った。
【結果】TRH-T投与前後のHDS-Rスコアの平均は9点(SD; 6.6)と19点(SD; 9.5)であり、19例(61.3%)がgood outcomeであった。TRH-T投与前のHDS-Rスコアが0から4点の群は他の群と比較して、有意にHDS-Rスコア改善が乏しかった(P = 0.031)。poor outcomeと関連した因子は、60歳以上(P = 0.02、オッズ比12.2)及びTRH-T投与前のHDS-Rスコアが4点以下(P = 0.0118、オッズ比11.9)のものであった。また、TRH-T非投与群と比較して、TRH-T投与群では有意にHDS-Rスコアが改善していた(P = 0.003)。
【結論】くも膜下出血後の遷延性意識障害に対するTRH-Tは、特に、若年でHDS-Rスコアが5点以上の症例に有効である可能性が示唆された。
【目的】TRH-Tの有効性、及び意識障害改善に関する因子について解析すべく、当施設で加療した脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血症例を検討した。
【方法】2011年から2017年に当施設で脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で入院加療を行った208例(男性76例、平均年齢61.4歳)を調査対象とした。データ欠損例を除外し、TRH-Tを投与した97例の中で、TRH-T投与前の長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)が20点未満であった31例(男性8例)が研究対象となった。平均年齢60.7歳、Hunt and Kosnik grade(grade 1; 1例、grade 2; 12例、grade 3; 12例、grade 4; 4例、grade 5; 2例)、動脈瘤部位は前方循環が29例、Fisher group 3が30例であった。HDS-Rスコアはクリッピング術後7日目に1回目の評価を行い、1日2mgのTRH-T投与終了2日後に2回目の評価を行った。TRH-T投与前後のHDS-Rスコアを調査し、8点以上の上昇をgood outcome、8点未満の上昇をpoor outcomeと定義し、スコア改善の因子について検討を行った。なお、自然経過におけるHDS-Rスコアの改善が懸念されたことから、TRH-T投与を行わなかった同条件の11例の患者との比較も行った。
【結果】TRH-T投与前後のHDS-Rスコアの平均は9点(SD; 6.6)と19点(SD; 9.5)であり、19例(61.3%)がgood outcomeであった。TRH-T投与前のHDS-Rスコアが0から4点の群は他の群と比較して、有意にHDS-Rスコア改善が乏しかった(P = 0.031)。poor outcomeと関連した因子は、60歳以上(P = 0.02、オッズ比12.2)及びTRH-T投与前のHDS-Rスコアが4点以下(P = 0.0118、オッズ比11.9)のものであった。また、TRH-T非投与群と比較して、TRH-T投与群では有意にHDS-Rスコアが改善していた(P = 0.003)。
【結論】くも膜下出血後の遷延性意識障害に対するTRH-Tは、特に、若年でHDS-Rスコアが5点以上の症例に有効である可能性が示唆された。