第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 症例

[O106] 一般演題・口演106
補助循環 症例05

Sat. Mar 2, 2019 3:40 PM - 4:30 PM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:岡田 保誠(公立昭和病院救命救急センター)

[O106-1] PCPSによる循環補助で救命しえた敗血症性ショック、子宮内胎児死亡の1例

芳賀 佳之1, 河野 康治1, 中山 英人1, 市川 大介2, 岡垣 竜吾2, 亀井 良政2, 瀬戸 健3, 川崎 大記3, 戸叶 美枝子3, 岡田 浩一3 (1.埼玉医科大学病院 集中治療部, 2.埼玉医科大学病院 産婦人科, 3.埼玉医科大学病院 腎臓内科)

【背景】ARDS、AKI、DICを合併した敗血症性ショック、子宮内胎児死亡の症例に対してPCPSを施行して救命しえたので報告する。【臨床経過】31歳女性。妊娠31週。Day1に家族とキャンプにでかけたが昼過ぎから悪寒を伴い発熱。同日16:00頃から下腹部痛が出現し近隣の産婦人科を受診した。受診時腹壁緊張とともに血尿と全身の紅潮を認め、胎児の徐脈を確認したため常位胎盤早期剥離の疑いで20:30に当院産婦人科へ転院搬送された。来院時意識レベルJCS 1、 GCS 14 (E3V5M6)、 呼吸数32/分、血圧80/50 mmHg、心拍数140 /分、 体温40。6℃であった。緊急帝王切開を考慮したが21:58に胎児心音が消失し子宮内胎児死亡と診断した。敗血症性ショック、DIC、AKI、ARDSの治療目的で22:50にICUに収容したが、呼吸障害が急速に進行しday 2の0:15に気管挿管を施行した。皮疹を伴う敗血症性ショックであることから黄色ブドウ球菌などによるtoxic shock syndromeと診断し感染源不明のままSBT/ABPC、CLDM、VCMの投与を開始した。子宮内感染が敗血症の原因と考えられたが出血傾向のため帝王切開術、死胎児の分娩誘導は保留となった。産科DICスコアは25点で血小板、FFP、フィブリノーゲンを使用するとともに、AKIによる無尿に対してday 2の11:00よりCRRT(CHF)を開始した。しかしARDSが増悪して呼吸循環不全となり、VTが出現しCPAとなった。CPRにより心拍再開したが、肺コンプライアンスが著しく低下し血圧維持困難となったため、救命には補助循環が必要と判断し22:36 左大腿動脈送血、右大腿静脈脱血でPCPSを開始した。ポンプ流量は2L/hr以上を持続的に維持可能で、循環動態の改善とともにARDSも漸次軽快した。Day 4 の4:25に死胎児を自然分娩し、感染源とみられる子宮内容娩出後、呼吸循環状態が安定しDay 5にはPCPSより離脱、Day 12に抜管した。意識障害や神経症状は遺残していない。以後腎機能が回復しday 13にCRRTより離脱、day 14にICUを退床した。HCUに転棟して腎臓内科の管理となりday 25に軽快退院した。【結論】ARDS、AKI、DICを合併した敗血症性ショックに、子宮内胎児死亡の患者に対し呼吸管理、体液管理、感染管理を行ったが病勢が進行し循環が破綻した。PCPSにより循環動態を改善させることで患者は多臓器不全を脱却し良好な転帰をとった。PCPSを適時に施行することの有効性が示唆された。