第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 症例

[O106] 一般演題・口演106
補助循環 症例05

Sat. Mar 2, 2019 3:40 PM - 4:30 PM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:岡田 保誠(公立昭和病院救命救急センター)

[O106-2] V-A ECMO離脱後にバンコマイシンクリアランスが著しく低下した1症例

鈴木 達也1, 山崎 伸吾1, 服部 憲幸3, 熊谷 崇2, 鈴木 貴明1, 中島 裕史2, 織田 成人3, 石井 伊都子1 (1.千葉大学医学部附属病院 薬剤部, 2.千葉大学大学院医学研究院 アレルギー・臨床免疫学, 3.千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学)

【背景】ECMO施行中は合併症管理として患者の感染制御が重要であり、バンコマイシン (VCM) はECMO患者に対しても頻繁に投与される。しかしECMO施行中のVCMの薬物動態は複雑であり、導入時および離脱時における投与設計に関する指標はない。今回、V-A ECMO離脱前後でVCM-CLが大きく変動した症例を経験したため報告する。【症例】70代女性、身長157 cm, 体重48.5 kg。既往に顕微鏡的多発血管炎があり前医で胸水貯留・肝障害等がみられ当院に転院となった。呼吸状態が悪化したため全身管理目的にICU入室となった。血管炎の増悪による肺胞出血と診断し、ICU 第1, 2病日にメチルプレドニゾロンパルス、血漿交換療法を施行。第3病日に突然心肺停止となったためV-A ECMO, IABPを導入した。第4病日、感染症治療強化目的にempiric therapyとしてVCMを開始した。第5病日にSawchuk-Zaske法によりVCM-CLは 51.5 mL/minと評価した。目標トラフ値15 - 20 μg/mLを得るため維持投与量を750mg q12hとし、第7病日にはトラフ値17.2 μg/mLと目標通りであることを確認した。第9病日にV-A ECMO離脱、第10病日にトラフ値は28.0 μg/mLまで上昇がみられ、VCM-CLは32.3 mL/minまで低下していると推察された。そのためVCM投与量を 500mg q24hまで減量したが、第14病日のトラフ値は31.5 μg/mLで、VCM-CLは8.8 mL/minまで低下していると推察された。VCM-CLが低下し目標血中濃度域を逸脱したため、積極的に投与量の修正を行ったが、それでも血中濃度コントロールに難渋した。V-A ECMO施行中の腎機能は正常であり、十分な尿量が得られていた。VCM-CLが低下した要因として、V-A ECMOの離脱による (i) 血行動態の大幅な変化に伴う腎のVCM-CL低下、 (ii) VCMのトラフ値上昇による腎機能障害 (iii) VCMの分布容積低下の可能性が示唆された。今後、V-A ECMO離脱後にVCM-CLが変動する要因や投与設計方法の確立に向け、さらなる症例数の集積・検討が必要と考えられた。【結論】V-A ECMO施行患者にVCMの投与設計を行う場合は、V-A ECMOによって血行動態が大幅に変化しVCM-CLが変動する可能性があるため、導入時や離脱時はVCMの薬物動態を再評価し投与設計を見直すべきである。