第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 症例

[O106] 一般演題・口演106
補助循環 症例05

Sat. Mar 2, 2019 3:40 PM - 4:30 PM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:岡田 保誠(公立昭和病院救命救急センター)

[O106-4] 大腿動静脈からの体外式補助循環のため両下肢切断が必要となった小児劇症型心筋炎の1例

髭野 亮太, 田中 智彦, 海老島 宏典, 前田 晃彦, 吉田 健史, 平松 大典, 内山 昭則, 藤野 裕士 (大阪大学医学部附属病院 集中治療部)

【背景】心不全治療や補助循環の進歩により小児の劇症型心筋症における初期救命率の向上がみられるようになった。一方、補助循環の合併症が問題になる症例が増えてきている。下肢コンパートメント症候群に伴う臓器障害と下肢機能の廃絶はその後の治療経過とQOLを大きく影響する合併所の一つである。大腿動静脈からの体外式補助循環のため重度の両下肢コンパートメント症候群となり両側下腿の切断を余儀なくされた症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は11歳女児。140cm 40Kg。発熱後第3病日に前医を受診した。VTのため除細動されるもその後VF、PEAとなり、大腿動静脈からのカニュレーションしV-A ECMO(Veno-Arterial Extracorporeal Membrane Oxygenation)とIABP(Intra-Aortic Balloon Pumping)が装着された。しかし、循環動態の改善が見込めず肺うっ血が進行し、ECMO挿入側の下肢虚血も疑われたため、補助人工心臓導入目的で第4病日に当院紹介転院となった。転院後、直ちに開胸下に送脱血菅を挿入し体外式両心補助人工心臓に変更した。同日に下肢コンパートメント症候群に対して減張切開を行った。しかし、両下肢に広範な筋肉の壊死がみられたため、第18病日両膝関節離断術、第23病日右股関節離断術施行が必要となった。腎前性腎障害に加えてミオグロビン上昇による腎障害も合併し第95病日まで血液浄化が必要となった。【考察】小児は成長発達過程にあり年齢と体格の個人差が非常に大きい。急性循環不全の際の補助循環の確立にはカニューレサイズと挿入位置の選定が流量確保の点で非常に重要である。ELSOガイドラインにおいて体重15Kg以上は大腿からのカニューレ挿入としているが、末梢血管への送血やうっ血などを考慮すると体重30Kg以上が望ましいとされている。ECMO時の四肢の虚血の発生率は成人で10-25%あると報告されているが、動静脈ともに細い小児では虚血の発生率はより高いと考えられる。過去5年間に小児劇症型心筋炎で当院ICUへ搬送された4症例のうち、来院時に大腿動静脈からV-A ECMO装着されていたのは4例であり、内3例ではコンパートメント症候群のため減張切開が必要で、その3例で2週間以上の血液浄化が必要となった。【結論】小児における大腿アプローチのV-A ECMOでは血管径が細いため、下肢のコンパートメント症候群を合併しやすい。早期に正中開胸アプローチのV-A ECMOへ変更する必要がある。