第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

患者管理

[O110] 一般演題・口演110
患者管理03

Sat. Mar 2, 2019 10:45 AM - 11:45 AM 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:齊木 巌(東京医科大学病院 麻酔科学分野 集中治療部)

[O110-1] 短時間で高度な低ナトリウム血症をきたしたTUR症候群の一症例

西ヶ野 千晶, 藤村 直幸, 吉野 淳, 漢那 朝雄 (雪の聖母会 聖マリア病院 麻酔科)

【背景】経尿道的前立腺切除術(TUR-P)では、大量の灌流液で視野を確保しながら、電気的に前立腺を切除する。前立腺の切離血管断端より大量の非電解質灌流液が吸収された場合、低ナトリウム(Na)血症(TUR症候群)をきたすことがある。長時間手術で起きやすいとされているが、今回、短時間で高度な低Na血症(100.4 mEq/L)をきたしたTUR症候群の一症例を経験したので報告する。【症例】81歳男性、149cm、39.8kg。前立腺肥大症に対し脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔にてTUR-Pが予定された。術前検査では、血清Na 143.3mEq/Lと正常範囲内であった。手術開始約40分後、気分不良の訴えがあった。バイタルサインが安定していたため経過を観察していたところ、約10分後に頭痛、嘔吐、不穏が出現した。血清Na値が100.4 mEq/Lを示したためTUR症候群と診断し、ただちにフロセミド静注ならびに観血的動脈圧モニタリングを開始した。頻脈となりSpO2も90%まで低下したため、酸素投与を開始した。TUR症候群診断15分後に手術は終了し、術後管理目的にICUへ入室した。ICU入室後、フロセミドの持続投与と生理食塩水の補液を行った。血清Na値はICU入室時109mEq/L、入室2時間後119mEq/L、4時間後121mEq/Lと徐々に上昇した。術後1日目朝、Na値は127 mEq/Lまで改善した。経過中、心室期外収縮の散発を認めたが、痙攣や意識障害など意識の変容は認めず、バイタルサインも安定していた。術後1日目、ICUを退室した。神経学的後遺症を残さず、術後7日目に軽快退院となった。【考察】短時間の手術にも関わらず、高度な低Na血症をきたしたTUR症候群の一症例を経験した。高度な低Na血症であったが、所見に乏しく発生を早期に予測することは困難であった。TUR-Pでは、手術時間が短時間であっても低Na血症が重度になることを念頭に置き、わずかな症状や状態の変化に対しても低Na血症の発症を疑い対処することが必要と考えられた。また、低Na血症発症後は血清Naの変化を継時的にモニタリングすることが重要と考えられた。