[O111-3] 初学者におけるECMO回路交換シミュレーションにおけるトレーニング効果の測定
【背景】ECMO長期管理において人工肺の劣化や血栓による回路トラブルに対し、回路交換を行うことは必須の手技であり、ECMOを行う施設のスタッフはチーム全員がその手技に習熟することが望ましい。しかし実際の患者で行う機会は多くないため、経験の浅いスタッフは相対的に回路交換を経験できない事が多く、シミュレーションによってその手順や物品の準備に習熟しておくことがチーム全体のECMO管理の質向上に必要である。当院では定期的に回路交換のシミュレーショントレーニングを行っているが、経験の浅い初学者にとってそれがどれほどの効果を及ぼしているかは不明である。【目的】回路交換のトレーニングに参加したECMO経験の浅いスタッフにおける、シミュレーショントレーニングの効果を測定する。【方法】回路交換シミュレーションに参加したスタッフを対象に、参加前と参加後で質問紙法による5段階の自己評価を行い、その変化を比較した。【結果】9人のスタッフがシミュレーションに参加した。職種は医師が6人、臨床工学技士が3人であった。ECMOの経験年数は0年から2年までで、実際の患者で回路交換を行ったことがあるものは4人であった。シミュレーションの前後において平均点を比較すると、回路交換に対する自信は1.7点から4.0点に、回路交換の手順の説明は1.6点から4.0点に、回路交換の物品準備は1.7点から4.1点にそれぞれ上昇した。回路交換にかかる時間の予測は97.8秒から37.8秒と大幅に短縮した。実際に回路交換のシミュレーションにかかった時間は40秒であった。【結論】ECMO回路トラブルはいつ生じるかわからないため、突然の事態にどのスタッフも回路交換を行える体制を作ることは非常に重要である。シミュレーション後の回路交換にかかる時間の予測は全員が30秒もしくは40秒と答えており、回路交換の手順や準備物品について自信を持って臨めるだけでなく、手技にかかる正確な時間感覚を身につけることができた証拠であると考える。実際の患者で適切な手技を行うために全体像を身につける上で回路交換のシミュレーションは経験の浅いメンバーにとって非常に有用であることが明らかになった。ECMOの長期管理を行う施設では、経験の浅いスタッフに向けて定期的にシミュレーショントレーニングを行っていくことが望ましいと考える。