第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

教育

[O112] 一般演題・口演112
教育02

2019年3月2日(土) 09:35 〜 10:15 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:奥村 将年(愛知医科大学 麻酔科学講座)

[O112-2] 専攻医・各診療科は集中治療研修の重要性を認識しているか?

巽 博臣1,2, 数馬 聡1, 赤塚 正幸1, 片山 洋一1, 後藤 祐也1, 黒田 浩光1, 升田 好樹1 (1.札幌医科大学 医学部 集中治療医学, 2.札幌医科大学 医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科)

新専門医制度が2018年4月に開始された。これまでの後期研修医は新たに「専攻医」と呼ばれるようになり、日本専門医機構は卒後2年間の初期臨床研修後、3年間程度の専門研修を行うことを推奨している。当院では2018年度、68人の専攻医が各診療科に在籍しているが、集中治療で研修したものはこの抄録を提出する時点ではゼロである。専攻医・所属する診療科は専門領域の研修に集中したい・させたいという思いが強いこと、さらに、大学病院に勤務する医師数が不足している診療科が多いことなどから、専攻医を集中治療研修に出せないというのが現状であろう。当院ICUはclosedの体制であるため、数か月の研修でも重症患者の全身管理を学ぶには良い環境であると考えられるが、当院では初期研修のローテーションとして集中治療は必須となっておらず、2018年度は初期研修医31人中、ICU研修を行うのは3人のみであるため、集中治療の重要性や醍醐味を認識する機会が少ない。さらに、急性期の全身管理・術後管理は集中治療医に完全に任せてしまう風潮が一部の診療科には浸透していることも、専攻医の集中治療研修に対して積極的になれない要因と考えられる。実際、朝夕のカンファレンス以外に入室患者を診察するのは各診療科の上級医の方が多く、研修医や専攻医がICUでの治療内容や経過について確認してくることは少ない。以前に比べて診療体制の細分化が進んでいるため、一般患者は各診療科、重症患者はICUに入室させて集中治療医、と分担するのは当然の流れであるが、“分業”と“丸投げ”を同列に考えている研修医・専攻医が増えている印象がある。現在の状況が続くと、専門性の高すぎる(=専門以外は診られない)専攻医が増加することが危惧される。ICUの体制がclosedかopenかによる差はあれども、ICUで集中治療を一定期間研修することは、人工呼吸器の設定や敗血症性ショック時の初期対応など、専攻医が後に集中治療医専門医のいない施設で勤務するときに有用なスキルを身につける絶好の機会であることから、各診療科および専攻医に対して集中治療研修の重要性について啓蒙する必要があると考える。