第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

教育

[O112] 一般演題・口演112
教育02

Sat. Mar 2, 2019 9:35 AM - 10:15 AM 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:奥村 将年(愛知医科大学 麻酔科学講座)

[O112-3] 救急、集中治療、循環器の各領域研修に不足するもの:エビデンスに基づく循環器救急集中治療の教育システム

嘉嶋 勇一郎1, 今村 浩1, 竹重 加奈子1, 岡田 まゆみ1, 高山 浩史1, 桑原 宏一郎2 (1.信州大学 医学部 救急集中治療科, 2.信州大学 医学部 循環器内科)

【背景】循環器救急集中治療の教育は、日本のみならず世界的な問題である。米国心臓病学会はScientific Statement (2012年)において、Emergency Department-Cardiovascular Intensive Care Unit一体型(ED-CICU)のような、エビデンスを有するCICUの設置が治療成績向上と共に教育面でも有用としてその必要性を提唱したが、本邦での認知度は低い。重症心血管疾患では、循環管理のみならず質の高い呼吸管理、血液浄化療法、せん妄、感染対策などが必要だが、これらは循環器医が通常診療において十分な経験を積むことが難しい。一方、on-line MCや電送心電図の判読、治療抵抗性VT/VF、非典型的な症状や経過のため見逃されやすい循環器疾患の早期発見、一般的な循環器診療に関する教育など、循環器医が救急・集中治療に関与できる領域は多い。【目的】我々の施設ではCCUを救命救急センター内に設置し、重症心血管疾患はそこに専従する循環器医が救急医・集中治療医とチームを形成し診療する。このED-CICUでは、循環器医は病院前から救急医と共に診療を開始し、また、ER診療から循環管理だけでなく集中治療医を加えて正しい集中治療管理を開始できる。また、救急・集中治療・循環器の各科からローテートを受け入れ、シームレスかつ体系的な集中治療管理が経験できるよう教育面にも注力する。しかしながら、ED-CICUを採用する施設は極めて少なく、その有用性を示したい。【方法】急性心筋梗塞(AMI)と院外心停止(OHCA)を例に、当院ED-CICUの治療成績を示す。【結果】AMIでは一般的に病院前12誘導心電図伝送がD2B時間を短縮するとされるが、当院ではその効果がない。これは、循環器医が救急医と病院前医療から連携するED-CICUの初期診療での有用性を示唆する。また、AMI後心原性ショックの30日死亡率は17.9%と全国平均33.5%を大きく下回る(P<0.05)。心原性OHCAでは目撃のある初期波形VF/VT症例で生存率/社会復帰率がそれぞれ42.0/33.0%と良好で、社会復帰例のうち16.0/13.0%はECPR施行後にROSCが得られていた(いずれも全国平均を上回る)。さらに脳血管障害の原疾患として見逃されやすい無痛性大動脈解離、様々な疾患に合併するたこつぼ型心筋症は、早期に診断される傾向が見られていた。【結論】複数領域の医師による集中治療管理を行うED-CICUは、治療成績の向上に寄与し、シームレスかつ体系的な集中治療管理を経験できる教育的効果をも有する。