[O117-7] 非常駐の集中治療専門医を介した二次救急病院の取り組みが患者予後に与える影響
ICUにおける医療体制と患者予後の関係は過去より様々な報告がされてきたが、不明な点も多い。今回、我々は、非常駐の集中治療専門医を介した取り組みにより患者予後が改善した経験を得たのでここに報告する。当病院は407床、年間救急車搬入台数約8000台の二次救急告示病院であり、ベッド数6床のICUを保有する。救急患者ならびに術後を含む院内の全ての重症患者は当ICUに入室し、年間ICU入室件数は400件前後である。以上の環境で、2014年10月以降より集中治療専門医が非常勤で週2回の勤務を開始し、両日で1患者あたり平均15.5分の多職種カンファレンス(集中治療専門医、担当研修医、看護師、理学療法士、栄養士)の運営を開始した。カンファレンスで討議された内容は担当研修医が主治医と連携をとりながら診療に反映させ、かつ、担当研修医に対してはICU診療全般に関する系統的講義を行うようにした。看護師側からの取り組みとしては、SAT、SBTプロトコールを導入し、他、早期経腸栄養開始に関して看護師のアセスメントによる医師への提案のルーチン化、も開始した。加えてこのカンファレンスを契機にICU患者を常時担当する理学療法士が選任された。以上の取り組みの元、患者背景に関して、2014年度→2015年度にかけて目立った変化は見られなかったが(敗血症患者割合6.8%→4.3%、ショック患者割合6.0%→7.0%、非術後患者割合68.2%→75.9%)、患者予後に関して特にICU入室1回あたりの平均総人工呼吸器装着期間:12.0日→6.1日と大きく減少させることができた他、ICU死亡率:8.2%→5.5% 、ICU滞在日数:5.3日→4.4日、入院日数:19.5日→17.9日と、概ね患者予後を改善させる変化を得ることができた。病院死亡率は両年とも1.8%と変化は見られなかった。現状、本邦において集中治療医が充足しているとは言いがたく、かつ全ての病院に常駐の集中治療専門医を配置することは難しい。その上で、常駐ではない集中治療医が関与したコメディカルを含むチームでの取り組みは、今後の本邦における集中治療を提供する医療体制を考える上で示唆に富む内容と考え、文献的考察を加え報告する。