[O119-3] 出血傾向にある補助循環留置患者の口腔ケアに難渋した一症例
【背景】
心原性ショックで循環維持が困難な患者に補助循環が導入されることがある。合併症管理のひとつに、ヘパリン化による易出血状態を踏まえた観察・介入が挙げられる。今回、急性心筋梗塞による心原性ショックで補助循環を留置し、出血傾向にある患者の口腔ケアに難渋した事例を経験したので報告する。
【目的】
出血傾向にある補助循環留置患者の口腔ケア事例を振り返り、今後の看護のポイントを導き出す。
【臨床経過】
患者は70代女性で、LMT(左冠状動脈主幹部)100%閉塞に対しIABP(大動脈内バルーンパンピング)の留置、血栓吸引を施行されたが、同日VT(心室頻拍)を発症し、循環維持目的にPCPS(経皮的心肺補助装置)を留置した(X日)。入院時の口腔内状況は、上顎に1本、下顎はほぼすべて残存しており、明らかな出血や潰瘍はなかった。X+1日目、バイトブロックにより舌に潰瘍を形成した。口唇の乾燥が著明なため、保湿ジェルを塗布して乾燥予防に努めた。X+4日目、気管チューブにより歯肉に潰瘍を形成した。チューブと歯肉の接触面にクッション性のドレッシング材を貼用し除圧を図った。X+6日目、口腔ケアのたびに潰瘍部から出血し、ケア直後より血液汚染していた。多い時では30分ごとに口腔内吸引を行い、圧迫止血用のガーゼ交換を要した。X+7日目、歯科医師に相談しガーゼ交換を1~2回/日程度とし、交換のタイミングで口腔洗浄するようケア方法を統一した。またCPC(塩化セチルピリジニウム)配合の洗口液を用い口腔内殺菌にも配慮した。X+17日目、新たに出血し再度止血困難となったが、出血点にサージセルを貼用し、その上にアズノールを塗布したガーゼを置くことで止血が得られたほか、潰瘍の増悪も認めなかった。また覚醒に伴う気管チューブの噛みしめが見られた際は、鎮痛目的にフェンタニルを増量し、苦痛緩和を図った。X+30日目、新たな出血や潰瘍形成することなく経過できた。
【結論】
今回、出血傾向にある補助循環留置患者の口腔ケアに難渋した一症例を経験し、以下の結論を得た。
補助循環留置患者の口腔ケアにおいては、
1.皮膚や粘膜を損傷させない予見的・愛護的介入を行う。
2.予め出血コントロールを意識した物品を用意する。
3.統一した手技・ケア方法を継続できるようスタッフ教育を行う。
4.患者の口腔状況に合わせタイムリーにケア方法を検討・介入する。
5.歯科医師や歯科衛生士などの専門家と早期から連携する。
心原性ショックで循環維持が困難な患者に補助循環が導入されることがある。合併症管理のひとつに、ヘパリン化による易出血状態を踏まえた観察・介入が挙げられる。今回、急性心筋梗塞による心原性ショックで補助循環を留置し、出血傾向にある患者の口腔ケアに難渋した事例を経験したので報告する。
【目的】
出血傾向にある補助循環留置患者の口腔ケア事例を振り返り、今後の看護のポイントを導き出す。
【臨床経過】
患者は70代女性で、LMT(左冠状動脈主幹部)100%閉塞に対しIABP(大動脈内バルーンパンピング)の留置、血栓吸引を施行されたが、同日VT(心室頻拍)を発症し、循環維持目的にPCPS(経皮的心肺補助装置)を留置した(X日)。入院時の口腔内状況は、上顎に1本、下顎はほぼすべて残存しており、明らかな出血や潰瘍はなかった。X+1日目、バイトブロックにより舌に潰瘍を形成した。口唇の乾燥が著明なため、保湿ジェルを塗布して乾燥予防に努めた。X+4日目、気管チューブにより歯肉に潰瘍を形成した。チューブと歯肉の接触面にクッション性のドレッシング材を貼用し除圧を図った。X+6日目、口腔ケアのたびに潰瘍部から出血し、ケア直後より血液汚染していた。多い時では30分ごとに口腔内吸引を行い、圧迫止血用のガーゼ交換を要した。X+7日目、歯科医師に相談しガーゼ交換を1~2回/日程度とし、交換のタイミングで口腔洗浄するようケア方法を統一した。またCPC(塩化セチルピリジニウム)配合の洗口液を用い口腔内殺菌にも配慮した。X+17日目、新たに出血し再度止血困難となったが、出血点にサージセルを貼用し、その上にアズノールを塗布したガーゼを置くことで止血が得られたほか、潰瘍の増悪も認めなかった。また覚醒に伴う気管チューブの噛みしめが見られた際は、鎮痛目的にフェンタニルを増量し、苦痛緩和を図った。X+30日目、新たな出血や潰瘍形成することなく経過できた。
【結論】
今回、出血傾向にある補助循環留置患者の口腔ケアに難渋した一症例を経験し、以下の結論を得た。
補助循環留置患者の口腔ケアにおいては、
1.皮膚や粘膜を損傷させない予見的・愛護的介入を行う。
2.予め出血コントロールを意識した物品を用意する。
3.統一した手技・ケア方法を継続できるようスタッフ教育を行う。
4.患者の口腔状況に合わせタイムリーにケア方法を検討・介入する。
5.歯科医師や歯科衛生士などの専門家と早期から連携する。