[O12-2] 呼吸器誘発肺障害におけるアクアポリンの役割
【背景】人工呼吸器による一回換気量の増大は肺障害と関連する。この肺障害によっておこる肺水腫が人工呼吸器関連肺障害の主病態である。Aquaporin (AQP) は細胞膜の水透過チャンネルとして機能する膜タンパクである。AQPは13種類のサブタイプを持ち、肺にはAQP1,3,4,5が存在する。そのうち、AQP1は肺微小血管内皮に、AQP5はI型肺胞上皮細胞に存在し、先行文献より急性肺障害との関連が注目されている。そこで我々は、AQPには人工呼吸器関連肺障害に対し重要な役割があると仮定した。【目的】呼吸器誘発肺障害とaquaporin の関連性を検証すること。【方法】Ratを、sham、一回換気量6 mL/kg、15 mL/kg、25ml/kg の人工呼吸群に分け、4時間の陽圧換気を行う。その後に肺組織を採取して、乾湿重量比を比較した。また、ウェスタンブロット法を用いて、各肺組織のAQP1 とAQP5 の蛋白発現レベルを測定し比較した。【結果】一回換気量が増大するとともに肺の乾湿重量比も増大する傾向にあり、6mL/kg 群と15mL/kg 群(p<0.05)、6mL/kg 群と25mL/kg 群(p<0.01)のそれぞれに統計学的有意差を認めた。AQP1の蛋白発現は換気量増大に伴い増加し、AQP5の蛋白発現は換気量増大に伴い減少する傾向にあった。AQP1は、6 mL/kg 群と25 mL/kg 群(p<0.05)、AQP5は、sham群と15ml/kg 群(p<0.05)、sham群と25 mL/kg 群(p<0.01)のそれぞれに有意差を認めた。【結語】本研究の動物モデルで、呼吸器誘発肺障害を再現し得た。また、AQP1とAQP5の蛋白発現レベル測定により、呼吸器誘発肺障害とaquaporinとが関連している可能性が示唆された。肺障害の予防や治療には,AQP の制御が重要であると考える。