[O12-4] 【優秀演題(口演)】ARDSにおける肺胞上皮細胞死はアポトーシスorネクローシス?:LPS誘導性ARDSモデルを用いた検討
【背景】急性呼吸窮迫症候群(ARDS)における肺胞バリアー破綻には肺胞上皮細胞死が大きな役割を果たしている.細胞死はアポトーシスとネクローシスに大別されるが,ARDSの肺胞上皮細胞死におけるそれぞれの寄与度は不明である.近年,特定の分子機構により“制御されたネクローシス”の存在が解明され,アポトーシスに加えて,ネクローシスも様々な疾患の治療標的となる可能性が示されている.従ってARDSにおけるアポトーシス,ネクローシスそれぞれの病態への寄与度を明らかにすることは,より有効な治療標的の同定に繋がる可能性がある.【目的】ARDSモデルを用いてアポトーシスとネクローシスどちらが肺胞上皮細胞死の主要因であるかを明らかにするとともに,制御されたネクローシス経路の活性化について検討した.【方法】マウスに低用量(1μg/body)または高用量(25μg/body)のLPSを経気管投与し,ARDSモデルを作成.コントロールは健常マウスとした.ネクローシス,アポトーシスそれぞれの寄与度を明らかにするため気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し,上皮細胞の全細胞死マーカーとしてサイトケラチン(CK)18-M65,アポトーシスマーカーとして同M30濃度を測定した.また,PI(propidium iodide)投与によるネクローシス細胞染色,TUNELによるアポトーシス細胞染色を行い,陽性細胞率を検討した.さらに,肺組織中のネクローシス関連遺伝子発現をリアルタイムPCRアレイで解析した.【結果】LPS誘導性ARDSではBALF中のCK18M65,M30双方が増加しており,アポトーシス,ネクローシスどちらも生じていると考えられた.だが,M65/M30比はコントロールと比べて有意に増加しており,TUNEL陽性細胞と比べてもPI陽性細胞が著増していた.以上から,LPS誘導性ARDSにおいてはネクローシスが肺胞上皮細胞死の主要因であると考えられた.また,肺組織中で“制御されたネクローシス”の一型であるネクロプトーシス関連遺伝子の有意な増加が見られた.【結論】LPS誘導性ARDSモデルにおいて,肺胞上皮細胞死の主な機序はネクローシスであり,また,ネクロプトーシス経路の活性化が見られた.ネクロプトーシスを含むネクローシスはARDSの有効な治療ターゲットになりうる.