[O120-5] 高度救命救急センターにおける重症度・看護ケア必要量スコアリングの多職種共有とICU再入室への影響の検討
【背景】喀痰排泄障害がある患者は、頻回な吸引や積極的離床など濃厚な看護ケアを要することがある。喀痰排泄障害を含む呼吸器系のトラブルがICU再入室の主原因と言われ、このような患者のICU退室には潜在的リスクがある。異なる病棟への移動には、患者の看護ケア必要量と提供可能な看護力の相対比を考慮する必要がある。そこで、看護ケア必要量をスコアリングにより可視化し、多職種で共有することで、より適切な患者配置に役立ちICU再入室患者数が減少するのではないかと考えた。【目的】重症度・看護ケア必要量のスコアリングの、ICU再入室率への影響を検討する。【方法】当院救命センターにおいて、Triage-RTSおよび、先行調査により作成した独自の看護ケア必要量スコアリング(看護必要度を基に「準備から終了まで10分以上を要する離床」を追加し、呼吸ケアを加点したもの。以下スコアリング)を2017年4月より実施し、結果を多職種カンファレンスで共有した。看護師・医師にアンケートを実施し、スコアリング前後の看護ケア必要量への関心などをWilcoxon符号順位検定で比較した。また、年間EICU再入室率を、Fisher’s正確確率検定を用いて比較した。【結果】看護ケア必要量への関心が、看護師(前2.6後3.5)・医師(前3.5後4.4)共に向上した。ICU退室の際に看護ケア必要量が考慮されていると思うかについて、看護師(前3.2後2.7)で差がなく、医師(前3.4後4.4)は向上した。呼吸状態悪化によるICU再入室患者は2016年13名(1.63%)、2017年5名(0.61%)と優位差はなく、ICU予定外再入室患者数は、2016年57名(7.13%)、2017年22名(2.7%)とスコアリング後に減少した。【考察】呼吸状態悪化によるICU再入室は件数が少なく、調査期間内では優位差が生じなかった可能性がある。予定外のICU再入室患者の減少は、スコアリング以外の要因の影響も否定できないが、重症度・看護ケア必要量が、呼吸状態悪化以外の何らかのリスク要因を反映している可能性があると言える。看護師において、ICU退室に看護ケア必要量が考慮さていると感じる度合いがスコアリング後に向上しなかったことから、スコアリング結果と看護師自ら感じる看護ケア必要量に乖離がある可能性や、退室患者決定のプロセスで、医師が看護ケア必要量について触れていない可能性が考えられる。【結論】重症度・看護ケア必要量のスコアリング後に、予定外のICU再入室患者数が減少した。