[O123-3] 敗血症患者におけるICU退室時の移動能力障害の予測因子
【背景】敗血症患者の生命予後は改善されつつあるが、依然として機能的予後は低いままである。先行研究でICU退室時の移動能力は患者の将来の機能的予後と強く相関する因子であることが知られており、ICUに入室した敗血症患者において早期からリハビリテーションを行うことで移動能力を維持、改善できる可能性がある。しかしながら、敗血症急性期においての早期リハビリテーションは依然として議論の余地があり、また、限りある人的、物的医療資源を有効活用するためにも、その適応は慎重に検討されなければならない。【目的】本研究の目的はICUに入室した敗血症患者がICU退室時に移動能力障害を有するかどうかをICU入室早期に予測する因子を同定することである。【方法】2012年9月から2016年9月までに当院救急・内科系ICUに入室した敗血症症例110例のうち小児(3例)、ICU入室中に看取り医療に移行した症例 (10例)、死亡退室した症例(18例)、ICU入室前より移動能力障害を有する症例(16例)、ICU退室時の移動能力が判定困難であった症例(11例)を除いた52例を後方視的に解析した。主要評価アウトカムはICU退室時の移動能力障害の有無とし、ICU Mobility Scale 9点未満を移動能力障害ありと定義した。ICU退室時の移動能力障害の有無と強く相関する因子を単変量及び、多変量ロジスティック回帰分析にて検討した。【結果】全体の症例のうちICU退室時に移動能力障害「あり」となった患者は67%(35/52例)であり、「なし」と判断された患者は33%(17/52例)であった。単変量解析において両群で有意差を認めた内容は、年齢、ICU入室前のClinical Frailty Scale、入室後24時間以内のSOFAスコア、バソプレシン使用の有無であった。多変量解析により、ICU退室時の移動能力障害の有無の独立したリスク因子として、ICU入室前のClinical Frailty Scale(オッズ比 6.57, 95%信頼区間, 1.48-30.75, p=0.017)が抽出された。【結論】敗血症患者のICU退室時の移動能力障害の有無に関して、ICU入室前のClinical Frailty Scaleは独立したリスク因子であった。ICU入室前のフレイルの重症度が高い敗血症患者では、特に重点的に早期リハビリテーションを行い、移動能力を維持、改善させることが重要かもしれない。