[O126-6] くも膜下出血患者の歩行開始時期が術後在院日数と歩行能力に与える影響~自宅退院例と転院例の比較検討~
【背景】集中治療管理となることが多いくも膜下出血は、脳卒中治療ガイドライン2015にて早期離床を注意すべき病態とされ、離床時期は個別検討とされている。近年、くも膜下出血術後の早期離床の有効性が報告されているが、自宅退院となった症例とリハビリテーション継続のために転院した症例とでは、歩行開始時期が術後在院日数や歩行能力に与える影響がどのように違うのか比較検討した報告は見当たらない。【目的】自宅退院例と転院例の特徴を比較し、歩行開始時期が術後在院日数と歩行能力に与える影響を明らかにすることを目的とした。また退院先に影響を与える要因を検討した。【方法】対象はくも膜下出血に対して根治治療がなされた41症例とした。自宅退院群(24例)と転院群(17例)に分け、年齢、性別、Hunt&Kosnikの重症度分類、術式(外科的治療、血管内治療)、術後人工呼吸器管理の有無、脳血管攣縮の有無、手術からリハビリテーション処方までの日数、術後歩行開始日、退院時modified Rankin Scale、術後在院日数、歩行能力評価として退院時Functional ambulation categoriesを後方視的に抽出し比較検討した。歩行開始日と術後在院日数および退院時Functional ambulation categoriesは相関関係を検討した。また退院先に影響を与える要因の検討として、従属変数を退院先としたロジスティックス回帰分析を行った。【結果】歩行開始日は中央値で自宅退院群12日、転院群19日と自宅退院群が有意に早かった(p<0.001)。自宅退院群は歩行開始日と術後在院日数に正の相関を認めた(r=0.688、p<0.001)。転院群は歩行開始日と術後在院日数に相関関係を認めなかったが(r=0.178、p=0.34)、歩行開始日が早いほど退院時Functional ambulation categoriesが良い結果となった(r=-0.518、p=0.033)。ロジスティック回帰分析では、退院先に影響を与える要因として歩行開始日が選択された(OR1.99、95%CI 1.22-3.24、p=0.006)。【結論】自宅退院群は全症例が歩行自立となり、歩行開始日が早いほど術後在院日数は短かった。転院群は、歩行開始日と術後在院日数に相関関係は認めなかったが、歩行開始日が早いほど、退院時の歩行能力が高かった。退院先に影響を与える要因には歩行開始日が選択された。本疾患は早期離床に厳重なリスク管理を求められるが、可及的早期からの歩行開始が重要であることが示唆された。