[O129-3] 【優秀演題(口演)】重症患者における急性期の蛋白投与量が早期離床・リハビリテーションの効果に与える影響
【背景】近年ICU獲得性筋力低下をはじめとするPICSを予防する目的にICUに入室した重症患者に対して早期離床・リハビリテーション(以下リハ)が普及した.重症患者にリハを実施し筋力維持を図る上で蛋白投与量は重要と思われるが,急性期の蛋白投与量とリハによる効果の関連性は明らかとなっていない.
【目的】蛋白投与量が不足すると蛋白異化亢進が助長され,さらなる筋力低下を招くことが仮説として考えられる.本研究の目的は,急性期の蛋白投与量がICU退出時の筋力と歩行自立までの日数に与える影響を検討することとした.
【方法】研究デザインは後ろ向きコホート研究である.対象は当院ICUにて48時間以上の人工呼吸管理を要した成人患者とし,脳卒中など原疾患が重篤な筋力低下を引き起こす疾患は除外した.対象の入院後1週間における蛋白投与量を調査し,重症患者における目標蛋白投与量の下限である1.0 g/kg/dayを基準に充足群と非充足群の2群に分類した. なお,ICUでのリハはベッド上の筋力トレーニングより開始し,循環動態の安定や鎮静薬の調整後,可能な限り早期より離床を実施した.統計学的手法は,傾向スコアマッチング法を用いて年齢,虚弱性,重症度,ステロイドや筋弛緩薬などの薬物治療状況,リハ状況など2群間における患者背景の交絡を調整した.次に,調整後の2群間において主要評価アウトカムであるICU退出時におけるMedical Research Council sum score(以下MRC-SS)と歩行自立までの日数を比較した.
【結果】調査対象となった全患者(N=69)の年齢は66±16歳,APACHE 2 scoreは26±7,挿管期間は7±4日,ICU滞在日数は8±4日であり,敗血症が30例(44%),蛋白投与量が非充足であったものが43例(62%)であった.なお,リハは入院から中央値1日より開始され,座位以上の離床は中央値4日から開始されていた.傾向スコアマッチング後,充足群26例(蛋白投与量1.27±0.23 g/kg/day)と非充足群26例(蛋白投与量0.63±0.22 g/kg/day)となった.ICU退出時におけるMRC-SSの中央値は充足群50[47-54],非充足群48[34-48]と有意な差を認めた(p=0.03).歩行自立までの日数は非充足群が充足群と比較して有意に長かった(Log rank 5.37,p=0.02).
【結論】ICUで可能な限りリハを実施していても,急性期の蛋白投与が不足すると筋力低下を招き,その後のADLの回復が遅延する可能性が示された.今後,ICUにおいてリハを実施していくうえで,栄養療法にも着目し適切な蛋白投与の提案も重要と思われた.
【目的】蛋白投与量が不足すると蛋白異化亢進が助長され,さらなる筋力低下を招くことが仮説として考えられる.本研究の目的は,急性期の蛋白投与量がICU退出時の筋力と歩行自立までの日数に与える影響を検討することとした.
【方法】研究デザインは後ろ向きコホート研究である.対象は当院ICUにて48時間以上の人工呼吸管理を要した成人患者とし,脳卒中など原疾患が重篤な筋力低下を引き起こす疾患は除外した.対象の入院後1週間における蛋白投与量を調査し,重症患者における目標蛋白投与量の下限である1.0 g/kg/dayを基準に充足群と非充足群の2群に分類した. なお,ICUでのリハはベッド上の筋力トレーニングより開始し,循環動態の安定や鎮静薬の調整後,可能な限り早期より離床を実施した.統計学的手法は,傾向スコアマッチング法を用いて年齢,虚弱性,重症度,ステロイドや筋弛緩薬などの薬物治療状況,リハ状況など2群間における患者背景の交絡を調整した.次に,調整後の2群間において主要評価アウトカムであるICU退出時におけるMedical Research Council sum score(以下MRC-SS)と歩行自立までの日数を比較した.
【結果】調査対象となった全患者(N=69)の年齢は66±16歳,APACHE 2 scoreは26±7,挿管期間は7±4日,ICU滞在日数は8±4日であり,敗血症が30例(44%),蛋白投与量が非充足であったものが43例(62%)であった.なお,リハは入院から中央値1日より開始され,座位以上の離床は中央値4日から開始されていた.傾向スコアマッチング後,充足群26例(蛋白投与量1.27±0.23 g/kg/day)と非充足群26例(蛋白投与量0.63±0.22 g/kg/day)となった.ICU退出時におけるMRC-SSの中央値は充足群50[47-54],非充足群48[34-48]と有意な差を認めた(p=0.03).歩行自立までの日数は非充足群が充足群と比較して有意に長かった(Log rank 5.37,p=0.02).
【結論】ICUで可能な限りリハを実施していても,急性期の蛋白投与が不足すると筋力低下を招き,その後のADLの回復が遅延する可能性が示された.今後,ICUにおいてリハを実施していくうえで,栄養療法にも着目し適切な蛋白投与の提案も重要と思われた.