第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

ショック

[O13] 一般演題・口演13
ショック01

2019年3月1日(金) 16:40 〜 17:15 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:小野 聡(東京医科大学八王子医療センター)

[O13-4] 膵頭部穿通を伴う巨大十二指腸潰瘍による出血性ショックに対して血管内治療で救命した1症例

石田 時也, 佐々木 徹 (太田西ノ内病院 救命救急センター)

【背景】上部消化管出血において内視鏡的治療で止血が困難な場合は、一般的に外科的治療が第一選択となる。造影CT検査にて膵頭部穿通の可能性が高く、内視鏡的治療により穿孔を来す可能性があり、外科的治療を選択した場合には膵頭十二指腸切除術が必要となる可能性があることを考慮し、血管内治療を施行して、救命した1例を経験した。【臨床経過】48歳男性。来院1週間前より胃痛、食欲低下。来院前日に黒色便を認め、来院当日に黒色便排泄後に気分不快が増悪し自ら救急要請。救急隊現着時は軽度意識障害、頻脈、頻呼吸、橈骨動脈微弱、冷汗湿潤著明で、ショック状態と判断され、ドクターカー出動。医師接触時もショック状態で、車内にて膠質液1000mlを急速投与。病院到着時は、一時的に若干の循環動態の安定を得たため造影CTを撮影した。胃幽門部後壁、十二指腸球部周辺に潰瘍を疑う所見を認め、壁に一部不連続性があり、潰瘍穿孔が疑われたが、明らかな遊離ガスを認めず、膵頭部への穿通の可能性が示唆された。内視鏡的治療では壁外へ穿通した動脈性出血に対しては止血困難であり、さらに送気により穿孔が増悪する可能性も考えられる。また、外科的には膵頭十二指腸切除術が必要となる可能性もあるため、各科と相談の上で、まずは血管内治療による止血を試みて、その後、明らかな穿孔所見が出現した場合に外科的治療を行う方針とした。造影CTにて右胃動脈が原因血管であると推定し、同血管を造影したところ血管外漏出像を認め、同血管をマイクロコイル6本を用いて塞栓し止血を得た。術後はICU入室、第6病日の内視鏡検査にて十二指腸球部前壁に巨大な潰瘍を認め、塞栓に用いたコイルの露出を認めたが、露出血管は認められず、潰瘍も治癒傾向であった。第8病日にICUを退室し、第15病日に独歩退院。第14、41病日の内視鏡検査において、コイルの露出を認めるものの潰瘍の縮小を認めた。【結論】膵頭部への穿通を伴う巨大十二指腸潰瘍に対して、限局的な血管内塞栓術を施行したが、虚血により潰瘍が増悪することなく、良好に経過した。今後も本患者の経過を慎重に追うとともに、症例を重ねていきたい。