第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[O130] 一般演題・口演130
鎮痛・鎮静・せん妄 研究04

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM 第22会場 (グランドプリンスホテル京都1F ロイヤルルーム)

座長:福田 友秀(東京都済生会中央病院)

[O130-3] 心臓外科手術後にHCUに入室した患者へのICUダイアリー導入の取り組み

内田 アン (社会福祉法人 三井記念病院)

【背景】心臓外科手術後のPICSやせん妄発症の割合は高い。患者が不穏状態になると対処が困難で身体抑制や鎮静剤投与せざるを得ないが、これらはPICSやせん妄の要因であり悪循環となる。せん妄患者にICUダイアリーを導入することで不安軽減や早期回復、抑制をしないせん妄対策に取り組めるのでは、と考え試みた経過を報告する。
【経過】病棟スタッフへPICSとICUダイアリー、せん妄、CAM-ICUの勉強会を行った。取り組むにあたり、表紙・看護師がコメントを残すページ・PICSやせん妄の概要・動脈ライン、CV、胸腔ドレーンなどデバイス類の解説テンプレートを作成し説明内容の統一と業務負担軽減を図った。ダイアリーを作成する看護師は必要なテンプレートを取り出し、患者や家族にPICSやせん妄の予防としてダイアリーを作成することを口頭で伝え開始した。記載したダイアリーはベッドサイドに置き転出時にファイルして渡した。対象は、ICUからHCUへ入室した心臓外科手術後の患者にCAM-ICU判定を行いエラーがあった者とした。2018年6-7月でHCUに入室した50名中せん妄判定された患者は14名。うち6名にダイアリー作成を行い、平均在日数は4.3日だった。ダイアリーの内容は、リハビリの様子や面会の家族の写真、デバイス類が減った事等回復に向かう様子が感じられるものであり看護師の励ましの記載が毎日書かれていた。ダイアリー作成について患者・家族の否定的な反応はなく、ファイルをみて幻覚体験を話したり、記憶がなく身体抑制をされている事で看護師に不信感を募らせた患者とは信頼関係を回復する事ができ、日中意識的に身体抑制解除するようになった。一方でダイアリー作成に至らなかった理由は、業務により作成時間が確保できなかった事や、ダイアリーの有用性を周知しきれていなかったためと考えられる。
【結論】意識が改善し離床が進むHCUでのダイアリー導入は、患者が集中治療室で経験している出来事や思いを振り返るだけではなく表出する機会となった。滞在中にせん妄改善には至らなかったが、せん妄症状の日内変動の中で記憶のゆがみが間を置かず修正されるため、継続していけばより効果が得られる可能性があると思われた。作成を通じて看護師が患者の体験に関心を持つようになり、せん妄に対する抑制以外のケアにつながっていると感じることができた。