第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液浄化 症例

[O133] 一般演題・口演133
血液浄化 症例02

2019年3月2日(土) 16:20 〜 17:10 第22会場 (グランドプリンスホテル京都1F ロイヤルルーム)

座長:三木 隆弘(日本大学病院 臨床工学室)

[O133-5] 心筋梗塞を合併した後天性血友病Aに対し単純血漿交換・持続的血液濾過と二重膜濾過血漿交換を施行した1例

岩田 文1, 大野 博司2, 松尾 淳一1, 古川 学1 (1.洛和会 音羽病院 CE部, 2.洛和会 音羽病院 ICU/CCU)

【背景】後天性血友病Aの治療としてはインヒビター産生阻止に対する免疫抑制療法,出血傾向への止血薬投与の2つがある.これらが無効または禁忌の場合,血漿交換によるインヒビター除去の有用性を示す報告がある.今回,後天性血友病Aに対する治療中に心筋梗塞を発症し抗血小板薬2剤併用療法を導入,またサイトメガロウイルス腸炎合併により免疫抑制薬漸減が必要となり,免疫抑制薬および止血薬を十分に投与できず急遽血液浄化療法を導入,血漿交換による第8因子インヒビターの除去効果が著明であり寛解に至った症例を経験した.実際の急性血液浄化療法を施行時の注意点とともに症例報告する.【臨床経過】口腔内血腫で入院となり原因不明のaPTT延長,筋肉内出血から後天性血友病Aと診断された75歳女性.後天性血友病Aの治療はステロイドによる免疫抑制療法と,凝固異常・貧血に対し遺伝子組み換え型第7因子製剤・活性型プロトロンビン複合体濃縮製剤の止血薬投与と赤血球RBC・新鮮凍結血漿FFP・血小板PCの輸血を行った.第19病日に心筋梗塞を発症したため抗血小板薬2剤併用療法が開始となり,止血薬と輸血を回避する目的にて単純血漿交換を施行した.治療条件は血漿分離膜:EVAL0.8m2置換液:FFP40単位(約2.5PV)とし,高流量置換を連日3日間行った.心筋梗塞後の低心機能のため,FFPによる容量負荷のリスクを考え持続的血液濾過(血液濾過膜:PES1.5m2置換液流量1.6L/h:前希釈除水量in+100ml~400ml/h)を併用した.治療前後で第8因子インヒビターは24B.U/mlから7B.U/mlと低下したが,持続的に出血が認められ輸血が必要であった.第23病日にサイトメガロウイルス腸炎に伴う消化管出血を合併し免疫抑制薬漸減が必要となり,第8因子インヒビター再上昇の可能性を考え二重膜濾過血漿交換療法を施行した.治療条件は血漿分離膜:EVAL0.8m2血漿成分分離膜:EVAL2.0m2置換液:20%アルブミン製剤・乳酸リンゲル液とした.隔日で4回の治療を施行し,治療前後での第8因子インヒビターは1B.U/mlから感度以下への低下が認められたため血漿交換療法を終了とした.【結論】後天性血友病Aで免疫抑制薬および止血薬投与が無効または禁忌の場合,単純血漿交換および二重膜濾過血漿交換は有効である可能性がある.施行にあたって,単純血漿交換では大量のFFP投与による容量負荷,二重膜濾過血漿交換ではアルブミン置換による凝固因子減少に注意が必要である.