第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

多臓器関連

[O135] 一般演題・口演135
多臓器関連

Sun. Mar 3, 2019 8:45 AM - 9:45 AM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:新井 正康(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学)

[O135-3] 重症患者における多臓器連関と生物学的安定性

浅田 敏文, 土井 研人, 井口 竜太, 早瀬 直樹, 山本 幸, 森村 尚登 (東京大学医学部附属病院 救急科)

【背景】臓器連関は臓器機能と共に生物学的な安定性において重要な役割を担うという概念がある。基礎研究分野では、細胞内分子の機能と連関は分子の集合である細胞の恒常性を、細胞機能と細胞同士の連関は細胞の集合である組織の恒常性を規定するといったエビデンスがあるが、臓器機能と臓器連関が多臓器の集合の安定性にどのように関係しているかの臨床的な検討は十分行われていない。
【目的】臓器連関と多臓器集合の安定性の関係を臨床検査指標を用いて検証する。
【方法】当院ICUに入室した患者570名を対象にICU入室時に血液採取を行った。肺、心血管系、腎臓、肝臓、炎症系、凝固系の6つの臓器システムに対して各1つの臨床検査指標を割り当て、臓器機能と臓器連関の評価を行った。臓器同士の連関は指標同士のSpearman順位相関係数により評価した。主成分分析を行い、6つの臓器をクラスタリングし、検出した多臓器集合の状態を主成分得点で評価した。多臓器集合の安定性を主成分得点の統計学的なばらつき(Ansari-Bradley検定)と設定した基準値からの逸脱の程度を用いて評価した。対象患者を1)死亡者、2)個別の臓器障害の程度が死亡者と同等のmatched生存者、3)それ以外のunmatched生存者の3群に分割し、各臓器障害の程度、臓器連関、多臓器集合の安定性を比較した。
【結果】対象患者のうち91名が院内で死亡した。matched生存者と死亡者は6臓器の障害の程度は同等であり、unmatched生存者よりも有意に重篤であった。6臓器は主成分分析により1)肺-腎臓-炎症系、2)肝臓-心血管系-凝固系の2つの多臓器集合に分割された。前者の多臓器集合では3群すべてで臓器連関が保たれており、主成分得点のばらつきは3群で同等だった。一方、後者の多臓器集合では死亡者でのみ臓器連関が破綻していた。matched生存者とunmatched生存者の2群では主成分得点のばらつきは同等だったが、死亡者では統計学的ばらつきは有意に大きく(vs unmatched生存者、P=0.001、vs matched生存者、P=0.009)、基準値からの逸脱も大きかった(vs unmatched生存者、P=0.005、vs matched生存者、P=0.004)。
【結論】臓器障害の程度に差があっても臓器連関が維持されていると多臓器集合としての安定性は維持され、臓器連関が破綻していると多臓器集合も不安定であった。臓器連関は生物学的安定性のおいて重要な役割を担っていることが示唆された。