第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

多臓器関連

[O135] 一般演題・口演135
多臓器関連

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:45 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:新井 正康(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学)

[O135-5] デスフルランによる劇症型悪性高熱症の管理で遷延する高熱の治療方針決定に苦慮した一症例

佐藤 友菜, 志賀 卓弥, 亀山 良亘, 井汲 沙織, 吾妻 俊弘, 齋藤 浩二 (東北大学病院 集中治療部)

【背景】サクシニルコリンの使用頻度の低下に伴い、悪性高熱症発生数は減少傾向にある。吸入麻酔薬単独でも発症しうるが、デスフルラン単独による劇症型悪性高熱症は本邦で報告がない。今回、デスフルランによる劇症型悪性高熱症を発症し、症状や検査値の改善に反して高熱のみが遷延したため、ダントロレン投与を継続するか方針決定に苦慮した1症例を経験したので報告する。
【臨床経過】20歳代男性、179cm、81kg。家族歴・既往歴:なし。経過:前医にて、腰椎分離症に対して腰椎後方固定術が予定された。麻酔はドロペリドール、フェンタニル、プロポフォール、ロクロニウムで導入され、フェンタニル、レミフェンタニル、デスフルランで維持された。導入約50分後より呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)と心拍数の異常な上昇を認めた。悪性高熱症を疑い、吸入麻酔薬の投与が中止された時点で腋窩温40.8度、心拍数150回/分、PETCO2 134 mmHg、血圧70/30mmHg台であった。麻酔維持を完全静脈麻酔へ変更し、手術は中止された。ダントロレン120mgが投与された後、当院へ搬送された。ICU入室後も、著明な筋肉痛と発熱を認め、ダントロレン200mgの持続投与を11時間行った。この後、中枢温で38度以下を目標にダントロレンを間欠投与する方針とした。第2病日、ダントロレン投与量が日本麻酔科学会悪性高熱症ガイドライン推奨の7mg/kgに達した時点で、検査値および臨床症状は改善を認めていたが、発熱が持続していたため、さらに投与を継続した。第6病日に中枢温37℃台となり、ダントロレンの投与を中止するまでの総投与量は1500mg(18.75mg/kg)であった。第15病日、腰椎後方固定術及び筋生検を完全静脈麻酔で実施した。筋生検検体のカルシウム誘発性カルシウム放出速度検査では異常亢進を示し、悪性高熱症素因の診断となった。
【結論】悪性高熱症に対するダントロレンの総投与量について、日本では7mg/kg、欧米では10mg/kgが推奨されている。本症例では、解熱が得られるまでに18.75mg/kgのダントロレンを必要とした。デスフルラン単独により発症した劇症型悪性高熱症に対し、発熱を指標としたダントロレン大量投与で管理し、良好な臨床経過が得られた。